コンビニエンスストアチェーンは“レジ横商品”としてドーナツ販売を本格的に開始し、“コンビニ・ドーナツ戦争”が展開されているが、その矢面に立たされているのが大手ドーナツ専門チェーンのミスタードーナツ(ミスド)だ。
ミスドを運営する清掃用具レンタル大手ダスキンの株価は、コンビニ・ドーナツをめぐる報道で激しく揺れ動く。2014年11月20日、ダスキンの株価は大幅に続落した。コンビニ最大手セブン-イレブンがレジ横に専用ケースを設置してドーナツの販売を始めると報じられたことが嫌気された。全国に約1万7000店という圧倒的な店舗数を誇るセブンがドーナツ市場に参入するとあって、ミスドを展開するダスキンへの影響を懸念する売りが出た。20日の終値は前日比82円安の1733円まで下落した。
ダスキンも株価対策を怠らない。和田哲也・ミスタードーナツ事業本部長は今年4月6日、都内で会見し、ミスドの15年3月期の既存店売上高が6年ぶりにプラスに転じたと発表。これを好感してダスキン株式が買われた。翌7日の終値は前日比27円高の2086円をつけた。5月15日の大引け後に決算を発表し、15年3月期の連結経常利益は前期比14.9%減の70億円になり、16年3月期も前期比4.0%減の68億円に減るとした。8期連続の減益である。
株価対策
この業績では株価の下落は避けられないが、株価対策をしっかりと用意していた。5月15日、株式公開買い付けを発表。買い付け価格は、普通株式1株につき2003円(3%ディスカウントした価格)、買い付け期間は5月18日~9月30日、買い付け予定の株数の上限は500万株(発行済み株式数の7.87%)、買い付け代金は100億円に達する。3月中旬、ダスキン株式20万株以上を保有する株主数社に売却を打診し、15社(合計276万株)が売る意向を示したことから、公開買い付けに踏み切った。
自社株買いを行うと、企業が資本をどれだけ効率的に使っているかを示すROE(株主資本利益率)が向上する。業績の不振が株価に影響を与えないよう、配慮したとみられている。
ダスキンの15年3月期連結決算の売上高は、前期比0.1%増の1679億円と横ばい。本業の儲けを示す営業利益は、23.7%減の50億円だった。ミスドを主力とするフードグループは、新たな出店に伴う直営店の増加が寄与し、売り上げは2.7%増の482億円と前期を上回った。営業損益は、ミスドのそれが改善したものの、その他フード事業の損失が拡大したため、2億円の営業損失を計上した。