東京証券取引所は、6月1日から「コーポレートガバナンス・コード」の適用を開始した。これにより、日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)は強化されるのだろうか。具体的な事例を見ながら検証してみよう。
大塚家具
最近、コーポレートガバナンスに関連して耳目を集めたのは、大塚家具の経営権をめぐる親子対立である。同社の業績は2000年代前半まで右肩上がりだったが、01年12月期の営業利益75億円をピークに悪化した。創業者の大塚勝久氏は、自社株買いに伴うインサイダー取引が摘発されたのを機に、09年に長女の久美子氏に社長を譲り、会長に退いた。ところが、トップ人事は二転三転する。
久美子氏のもとで、大塚家具はリーマン・ショック後の景気後退もあって業績が伸び悩む。14年7月、業を煮やした勝久氏は久美子氏を解任。自ら社長に返り咲き、会長を兼務する。ところが半年後の今年1月、同社は久美子氏の社長復帰を発表。勝久氏と久美子氏が、それぞれの人事案を通すために委任状争奪戦を繰り広げた。
大塚家具は、経営をめぐる主導権争いを抑制する機能や仕組みが整っていなかった。同族企業が単なるプライベート・カンパニーであれば、お家騒動がこれほど騒がれることはない。問題は、同社がジャスダックの上場企業であることだ。どちらが経営権を持つべきか、株主の判断に委ねられた。
3月27日に開催された株主総会では、久美子氏は社内取締役を5人から4人へ、社外取締役を2人から6人へそれぞれ変更するなど、ガバナンスの強化を押し出した議案を上程し、出席議決権の61%の賛成を得て可決され、騒ぎはひとまず落ち着いた。
シャープ
シャープは15年3月期、2223億円の最終赤字に陥った。中期経営計画によれば、国内3500人の希望退職を募り、大阪市にある本社ビルは売却。副社長と専務の計4人が責任を取って6月で取締役を退く。
危機の背景には、コーポレートガバナンスの欠如がある。その象徴が近年混乱を重ねたトップ間の抗争だ。
よく知られているように、町田勝彦氏は1998年に社長に就任した当時「テレビをすべて液晶に変える」と宣言し、04年に液晶専用工場の亀山工場(三重県)を稼働させるなど「液晶のシャープ」の土台を築いた。07年、次期社長として49歳だった片山幹雄氏を指名。液晶のエキスパートである片山氏は、液晶事業の拡大路線を走り、07年に大阪・堺に液晶の新工場を建設することを発表。08年3月期には過去最高益を叩き出した。ところが、同年9月のリーマン・ショックに襲われた。