経営トップ陣のゴタゴタが、不適切会計問題に直結するとはいい切れない。しかし、まったく無関係ともいえないだろう。ガバナンスの働かない組織内では、さまざまなかたちでほころびが生じる。
コーポレートガバナンス・コードは、不祥事の抑制に働くのか
6月1日から適用が開始されたコーポレートガバナンス・コードは、安倍政権が打ち出した「日本再興戦略」の一環として策定された。昨年制定された「スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)」とともに、コーポレートガバナンス強化の“車の両輪”といわれる。
コーポレートガバナンス・コードの適用によって、経営への監視・牽制効果、企業の競争力、収益力の向上に加え、経営の透明性を確保して海外からの投資を呼び込む効果などが期待されている。
コーポレートガバナンス・コードには、「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」が定められている。具体的には、独立性の高い社外取締役を2人以上選任、女性活用や事業持続可能性への対応の公表などが求められる。
では、コーポレートガバナンス・コードの適用は、日本企業のガバナンス強化の切り札となり得るのか。
大塚家具はジャスダック上場企業なので、コーポレートガバナンス・コードの対象外だが、株主総会前の段階で2人の社外取締役がいた。実は今年1月15日、社外取締役や社外監査役の6人から会長兼社長の勝久氏(当時)に対して、コンプライアンス体制の強化や適切な開示および株主に対する適切な対応などの要望事項が提出された。その意味で、コーポレートガバナンスは機能しなかったわけではない。しかし、勝久氏は聞く耳を持たず、“外部の目”はトップの暴走を止められなかった。
シャープは、08年に執行役員制度を導入した。複数の社外監査役に加え、09年以降、1人、もしくは2人の社外取締役を設置している。東芝は03年に指名委員会等設置会社(当時の委員会等設置会社)に移行した。しかし、両社とも混乱を避けることにはつながらなかった。
確かに、コーポレートガバナンス・コードの適用によって、経営の効率化が進んだり、不祥事に抑制が働くことはあるだろう。株主、とくに海外の投資家に対して経営の透明性をアピールする効果が期待できる。しかし、コードの適用が万能ではないこともまた、ここまでに挙げた事例から容易に想像がつく。
企業の評価基準をめぐっては、リーマン・ショック後に大きく変わった。「量」よりも「質」が問われるようになった。実際、経営陣の間に確執や抗争があれば当然物事がなかなか決まらないし、経営のスピードも落ちる。会社が一つにまとまって前に進むことができないなど、弊害があまりにも多い。その意味で、経営の「質」を問うコーポレートガバナンスの重要性は増す一方だ。
企業は私物ではなく、消費者や社員、地域社会、株主などステークホルダーとつながった「社会の公器」であることを、経営者は以前にも増して何倍も肝に銘じなければいけない。また、企業の存在意義を明確に定め、経営理念に基づいた運営を行うことが求められるのである。
(文=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家)