M&A(合併・買収)仲介大手、日本M&Aセンターが4月27日、2015年3月期の経常利益予想を10%上方修正すると発表した。63億円強となる経常益は、5期連続更新となる過去最高益予想をさらに上回る。業績好調の理由は、M&A仲介の成約が過去最多となる338件(譲渡・譲受は別カウント)となったため。前期は256件だったので、32%の件数増加だ。15年3月期の売上高予想は122億円強であり、単純計算でM&A仲介成功手数料収入は一件当たり3600万円程度と推定される。
好業績が続き、同社の給与は日本有数となりつつある。14年実績で30歳平均、40歳平均両方の年収でキーエンスに次いで上場会社では第2位となった。ちなみに30歳社員の平均は1253万円(14年10月17日付東洋経済オンライン記事より)だが、これは男女社員合わせての平均だ。転職・就職情報サイトのキャリコネ上で、同社の30代男性コンサルタントは自らの年収が2549万円(13年度)だと明かし、「成果主義で青天井のインセンティブ制度となっているため、大きなプロジェクトをまとめた時には1000万円を超えるインセンティブを獲得できることも少なくない」と述べている。
ここ最近のM&Aでは、サントリーホールディングスが米ウィスキー大手ビームを1兆6000億円で買収(14年)したり、日本郵便が豪物流最大手トールを6200億円で買収(15年)したりと大型案件が目につく。
一方、日本M&Aセンターが主として成約させているのは「スモールキャップ」と呼ばれる年商1~20億円規模の中小企業だ。このゾーンや、その前後の「ミッドキャップ(中堅企業)」「マイクロキャップ(小規模零細企業)」のM&A件数急増が、同社の追い風となっている。
M&A増加の背景に後継者不足問題
競合するレコフの調査によれば、日本におけるM&A件数は06年に約2700件とピークを付けた後、08年のリーマン・ショックで停滞したが、11年を底として急速に回復してきている。14年には約2300件まで回復し、日本M&Aセンターの主セグメントとなっている「In-In(国内企業同士のディール)」も総計1500件を超えた。
中堅、中小企業のM&Aが増えてきた背景には、創業経営者やオーナー経営者の高齢化と後継経営者不足がある。子息や同族が経営承継してくれればいいが、そうでない場合、つまり従業員経営者を求める場合にネックとなるのが、資本承継と金融機関に対する信用保証である。創業経営者が数十億円を限度とした個人保証を銀行に入れているような場合、従業員経営者ではそれにとても対応できない。社員としての退職金では数千万円を積めるのがせいぜいだろう。後継経営者を確保できず、黒字廃業などが多数みられるようになってきている。
そうした企業を救う選択肢として利用されているのが事業売却だ。事業売却が実現されれば、オーナー経営者は結構なキャッシュを懐に引退できるし、社員の雇用は継続される。つまり、経営者と社員は「Win-Win」となる。