「本当に事業を売却することなどできるのだろうか」と疑う経営者も多いが、あるM&A仲介コンサルタントは「必ず売れる。不動産と同じで、適正価格がいずれ形成されるからだ」と断言する。何より、近年の傾向として「時間を買う」「段階上がり的な業績向上を目指す」経営技法としてM&Aが広く認知されてきたことが大きい。筆者もオーナー経営者などに積極的にM&Aの活用を勧めているが、実は買収を希望する企業が多くて簡単に決められないというのが現状だ。
賢い戦略的な一手
そこで売却先の発掘がM&A仲介会社のKSF(キー・サクセス・ファクター:主要成功要因)となるわけだが、日本M&Aセンターはここでも周到な手を打っている。12年に日本M&A協会を立ち上げ、全国の有力会計事務所・税理士事務所と提携のルートをつくったのだ。前述の「スモールキャップ」や「ミッドキャップ」をくまなく押さえているのが各地域の会計事務所や税理士事務所だ。これらとのネットワークを確保したのは、戦略的にとても賢い一手だ。
日本M&Aセンターは、IT会社・日本オリベッティ(現NTTデータ ジェトロニクス)で一緒に金融セクター向けのシステム事業をしていた分林保弘会長と三宅卓社長が設立した、いわば元ベンチャーだが、これほど成功したベンチャーも珍しい。
売り上げ規模的には業態がサービサーなので、クライアント側の大企業と肩を並べるべくもないが、前述のとおり15年3月期予想ベースでは、売上高122億円強に対し経常益予想が63億円もある。売上高経常利益率が実に50%を超えるという高収益率は、東証一部上場企業の中でも突出している。企業M&Aが通常の経営技法として受け入れられ始める中、同社のようなM&A仲介会社は今後ますます伸びていくだろう。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)