同窓会などの場で、昔の友人が今はどういう人生を送っているのか、互いに紹介し合ううちに、こんな感想を抱いた人もいるのではないでしょうか。
人間はしょせん周囲の人間との距離感で相対的に価値判断して泣いたり笑ったりしている生き物です。したがって旧知の友人とはいえ、単純にその成功を喜べないのは当然のことといえます。
今回は、そういった時にどのように現実に向き合うべきかについてまとめておきましょう。
●有名大企業や外資勤務の友人に圧倒されたら…
仮に、あなたが10年後に会社があるかどうかも怪しい零細企業で働いているとします。一方、久々に会った友人が、誰でも知っている有名大企業の本社で働く総合職だったとします。『会社四季報』(東洋経済新報社)で調べてみると、平均賃金は自分の1.5倍ほどもある会社です。「もう自分は彼に一生勝てないほどの差がついてしまった」と思うかもしれません。でも、現実はそう単純なものでもありません。
『会社四季報』等で公表されている給料は全従業員の平均であり、バブル以前に入社して昇給しまくったベテランも多く含まれています。その後、日本経済が停滞する中、大企業の労使は賃金カーブのピークを従来の50代半ばから40歳前後に引き下げ、さらにポストも減らしたため、50歳を過ぎても6割ほどの大卒社員が役職なしの平社員という状況です。つまり、平均賃金が800万円の会社でも、40歳未満に限ってみれば600万円いくかいかないかくらいで、それ以上は伸び代も少ない大企業が世の中にはゴロゴロしているわけです。これからそういった大企業の平均賃金はベテランのリタイヤと共にどんどん下がり続けますから、彼とあなたの差は1.5倍よりはずっと小さくなるでしょう。
さて、あなたの前に外資系金融機関で働く友人がにこやかに現れました。聞けば年俸は3000万円ほどだといいます。「間違いなく、彼には一生勝てない」と思うかもしれません。確かに、その業界に桁違いに稼ぐ人がいるのも事実です。ただ、現実にはごくごく一部の例外的存在であり、2008年のリーマンショック以降はさらに激減しています。
例えば、筆者の同期で外資系金融機関に進んだ人は、すでに過半数がドロップアウトしています。40歳で同じ企業に残っている人も(かなり優秀な人材なのですが)話を聞くと「この仕事が続けられるのはあと数年で、それから先は白紙」といった悩みを抱えていたりします。
そう考えると、終身雇用前提の賃金と単年度ベースのそれを比較すること自体に無理があるわけです。