ついに「売り上げマイナス」
情報サイト「フォーサイト」による報道もあり、8月末、ミュゼには解約を求める顧客が殺到し蜂の巣をつついたようなパニックに陥った。コールセンターへの着信件数は平時の20倍を超え、ついに一日の解約金が契約金などの入金を上回り、「売り上げマイナス」という恐れていた事態が発生した。
9月1日、ジンは次のような経費削減策を決定した。
(1)本社事務所の縮小
(2)役員報酬の大幅減額
(3)広告の見直し
(4)スポンサー契約などの見直し
(5)CSR活動の見直し
(6)ジンがスポンサーの雑誌「Shunme」の休刊
(7)寮や社宅の解約
だが、巨額の簿外負債をどうするか、銀行や取引先との関係維持をどうするかという会社存続の根幹にかかわる問題を前に、こうした小手先の経費削減など焼け石に水だ。抜本的な施策が示されるのは、外資系会計事務所PwCによるデューデリジェンス(資産査定)が終わる9月以降となるだろう。
朽ちた上場
実はこの騒動のとばっちりを受け、上場を取りやめざるを得なかった企業がある。9月16日にマザーズ上場予定だったネットマーケティング(主幹事・SBI証券)だ。同社は8月27日、突如上場の延期を発表。その理由について「特定企業との取引に関連し、2016年6月期の業績見通しが未達になる可能性が生じた」とのみ説明した。
この「特定企業」はエーアイパシフィックという企業で、ネットマーケティングの販売実績の2割を占める得意先だった。実は、エーアイパシフィックの実態はジンのトンネル会社といっても過言ではない。取引の約9割はジン関係であり、事務所も同じビルに所在している。報道がなければ、新たな「上場ゴール」銘柄が生まれる可能性があったのだ。
常陽銀行の責任
この推移によって注目されるのが、ジンに役員を出しているメインバンクの常陽銀行の責任だ。同行は過去4度のシンジケートローン(複数金融機関による協調融資)のアレンジャー(幹事金融機関)を務めており、今年3月の第4回シンジケートローンでは13億円を調達したが、同じ月に常陽・足利銀行に5億円づつ返済がされている。