9月4日発売の「フライデー」(講談社)に掲載された、女性アナウンサーの衝撃的な写真が話題を呼んでいる。「フライデー」は、女子アナ・Aさんと元交際相手の年上男性のキス写真や、裸でベッドに横たわっている写真を袋とじで掲載した。
Aさんと男性の顔にはモザイクがかけられているが、記事中ではAさんに関する詳細な情報も書かれており、あまりに赤裸々な内容であることから、リベンジポルノ(別れた恋人や配偶者への腹いせに、プライベートな画像などを一方的に公開すること)の可能性も指摘されている。もし、仮にその指摘が事実であれば、「フライデー」がリベンジポルノに加担したかたちとなるため、一部で「フライデー」への批判も過熱している。
では、この写真が、怨恨などを理由にある人物が「フライデー」に提供したものであれば、その人物および「フライデー」の法的責任はどのようなものになるのだろうか。
弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPCの弁護士の児玉政己氏は、次のように解説する。
「『フライデー』および写真の提供者については、民事上の損害賠償責任のみならず、懲役または罰金刑という、刑事上の責任を問われる可能性があると考えられます。昨今、問題となっているリベンジポルノの問題に対処すべく、昨年11月に『私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律』(通称リベンジポルノ防止法)が制定されました。同法では、
(1)性行為、またはそれに類似する行為をしている人の姿
(2)他人が、人の「性器等」(局部のほか、乳首等も含まれる)を触る行為、または人の性器等を触る行為に関する人の姿で、性欲を興奮させ、または刺激するもの
(3)一部でも服を着ていない人の姿のうち、人の「性器等」の周辺部まで含めた部分の露出、またはその部分が強調されている写真で、性欲を興奮させ、または刺激するもの
のいずれかに該当する画像や写真を、『撮影されている人が特定できる方法』で不特定多数の人に提供、または公然と陳列する行為について、3年以下の懲役または50万円以下の罰金を科すとしています。また、自らが不特定多数の者に提供等しない場合であっても、それを行わせる目的で上記(1)~(3)の画像や写真等を提供する行為自体にも、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます」
リベンジポルノ防止法の適用対象に?
「フライデー」に掲載された写真を見る限り、少なくとも上記の(2)に該当することは間違いなさそうだ。そのため、写真が「撮影対象者を特定できる方法」で提供等されている場合は、リベンジポルノ防止法の適用対象になると考えられる。
その点、問題の写真はAさんの顔にモザイクがかけられており、写真そのものからは、誰が撮影されているかはわからない。
「しかし、リベンジポルノ防止法は、写真そのものから人物が特定できることを求めてはおらず、あくまで特定できる方法で提供等する行為を問題としています。『フライデー』は、女性の口元について歯並びまで鮮明にわかる写真を掲載しているほか、女性の属性や情報を多数掲げており、総合的に見れば『撮影対象者を特定できる』提供行為と言い得る内容になっているとも考えられます。そして、特定できる場合には『フライデー』の掲載行為は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金を科される行為に当たると考えられます」(児玉氏)
また、写真の提供者についてはどうだろうか。
「写真の提供行為自体が問題となるためには、『不特定多数人への提供等の目的』が必要になりますが、少なくとも、スキャンダル系の記事を提供する雑誌として有名な『フライデー』に写真を提供しておきながら、当該目的を持っていなかったと弁解するのは、難しいのではないでしょうか。
なお、撮影されている女性が特定できる場合には、リベンジポルノ防止法に基づく罰則のほか、プライバシーの侵害等を理由として、民事上の不法行為責任の追及を行うこともできるものと考えられます」(児玉氏)
ただし、Aさんが撮影者以外の人物にも閲覧されることを承諾した上で撮影されていたり、自ら撮影していた場合には、上記の責任は生じないという。
(文=編集部、協力=児玉政己/弁護士法人AVANCE LEGAL GROUP LPC弁護士)