「NHKの現役女子アナが、高級デートクラブに登録していた」と、7月14日発売の「週刊文春」(文藝春秋)と「週刊新潮」(新潮社)が同時に報じている。
両誌の記事によると、当該女性はNHK室蘭放送局に勤める契約リポーターで、現在25歳。全国展開するデートクラブに登録しており、利用する男性は最高30万円の入会金に加え、数万円のセッティング費用を支払って“交際”を楽しむという。
今後、デートクラブに登録していたことを理由に、当該女性に対して契約解除や減給などの懲戒処分が下る可能性はあるのだろうか。また、その場合、処分は適切といえるのだろうか。弁護士法人ALG&Associates弁護士の榎本啓祐氏に聞いた。
「懲戒処分は、企業秩序の維持のために会社から従業員に対してなされる制裁と考えられています。業務に関係しない私生活上の行為であっても、企業秩序に直接の関連を有するものであれば企業秩序を乱し得るため、懲戒処分の対象になり得ます。
また、企業の社会的評価を低下させたり毀損したりするような行為は、私生活上の行為であっても企業の運営に支障をきたす可能性があるため、懲戒処分の対象となる場合があります(ただし、前提として、当該行為が懲戒処分の対象となる旨が就業規則に定められていることが必要になります)。
デートクラブへの登録は私生活上の行為になりますが、これによってアナウンサーの品位を低下させ、NHKの社会的評価が低下する可能性はあり得ると考えられます。したがって、当該行為が就業規則などに定められた懲戒事由に該当すれば、懲戒処分が認められる可能性はあります。
しかしながら、デートクラブへの登録行為は『違法』とはいえないと考えられます。また、デートクラブへの登録によって業務に支障をきたしたといった事情もない場合、企業秩序を著しく乱したとは判断し難いです。よって、減給や契約解除といった重大な懲戒処分は違法とされる可能性があります」(榎本氏)
NHK女子アナが売春に問われる可能性は?
また、当該女性が登録していたデートクラブについて、記事では「実質的に売春を斡旋する高級愛人クラブ」と言及されている。現時点で、当該女性および業者側が売春に問われる可能性はあるのだろうか。
「売春とは、対償を受け、または受ける約束で不特定の相手方と性交することをいいます。売春防止法においては、公共の場所などで売春を勧誘する行為、売春を周旋する行為、人をだましたり困惑させたりして売春をさせる行為、売春を行うための場所を提供する行為などが処罰の対象とされています。
意外かもしれませんが、売春行為やその相手方となる行為自体は罰則の定めはありません(もちろん、未成年であれば罰則の対象となります)。これは、人に売春をやらせている者が悪者であり、売春をさせられている者は救済すべきといった考え方によるものなどといわれています。
当該女性については、仮に売春をしていたとしても、その行為自体が刑罰の対象とされることはありません。もし、当該女性がデートクラブのサイト上で『○○円くれたら性行為をします』などと呼びかけを行っていれば、売春の勧誘行為として刑罰の対象になり得ますが、そのようなこともなさそうです。
一方、デートクラブを運営している業者については、『売春を周旋している者』などと判断されれば刑罰の対象になり得ます。しかしながら、運営業者としては、あくまでも出会いの場を提供したり、デートなどを周旋したりしているのみであり、『売春を周旋しているわけではない』という立場で営業を行っていると考えられます。
そうである以上、サイトを通じて出会った男女が売春を行っていたとしても、それは『当事者が勝手にしたことであり、業者が関与し得るところではない』ということになります。したがって、運営業者の罪を問うことも難しいと考えられます」(同)
嘘の釈明で処分内容が重くなる可能性も
両誌の取材に対して、当該女性は登録の事実について認めているが、「結婚相手を探すため」であり、「愛人クラブとは知らなかった」と答えている。しかし、当該女性は4人の男性とデートを重ねており、発言を素直に受け止めるのは難しい。仮にこの発言に嘘があった場合は、何か法的な問題があるのだろうか。
「嘘をついて、お金を取ったり相手方に損害を生じさせたりした場合は、違法行為となる可能性があり、刑事罰の対象ともなり得ます。しかしながら、嘘をつく行為自体は、裁判所での証言など例外的な場合を除いて違法とはなりません。
したがって、仮に当該女性の対応に嘘があったとしても、それによって直ちに違法となることはないでしょう。しかしながら、今回の件を理由に懲戒処分が下された場合、嘘をついたことをもって『反省の意思がない』などとされ、処分内容が重くなる可能性はあると考えられます」(同)
いずれにせよ、NHKは先日もアナウンサー同士の不倫が報じられており、大きなイメージの低下は免れないだろう。
(文=編集部、協力=榎本啓祐/弁護士法人ALG&Associates弁護士)