惨殺された女性芸能人たち…元アイドル、現役高校生タレント…ストーカー男たちの凶行
新型コロナウイルス禍は、リアルに「死」というものについて考えさせられる機会だったのではないだろうか? 特に、志村けん、岡江久美子という有名芸能人が、未知のウイルスに冒されて立て続けに亡くなったことに、強い衝撃を受けた人は少なくないだろう。
誰もが知る著名人物であろうと、華やかな舞台に立つスターであろうと、いつかは命果てるときが来る。ただ、芸能人もそれぞれひとりの人間であり、「死」のかたちもさまざまだ。寿命をまっとうして大往生するケースもあれば、なかには志半ばにして痛々しい最期を迎える場合もある。
このシリーズでは後者にフォーカスして、まずは女性芸能人編として4つの記事を読者諸氏にお届けしたい。第1回のテーマは、「殺人事件」による死である。
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美空ひばり、吉永小百合、松田聖子、AKB48が命の危機に
美空ひばりは、1957年1月13日、東京・浅草の国際劇場でファンの女性に塩酸をかけられたことがある。
1963年8月9日、吉永小百合の実家にある本人の部屋に、刃物と短銃を持った男が侵入。家族の機転で何事もないまま男は逮捕されたが、警察の捜査に、「小百合の体に自分の名前を入れ墨で刻もうと思った」といった旨の供述をしたという。
1980年代のトップアイドル・松田聖子は人気絶頂期の1983年3月28日に、沖縄市市営体育館でのコンサートの最中、ステージに乱入した男に金属の棒で殴打された。
2014年5月25日、岩手産業文化センターで開催されていたAKB48の握手会イベントにおいて、ノコギリを持った男が、メンバーの川栄李奈と入山杏奈、そして2人を守ろうとした男性スタッフを切りつけている。
このように、時代ごとにトップアイドルたちは、一歩間違えると命を失うような危機に晒されている。だが、日本の芸能史に極めてわずかながら存在する、女性芸能人の殺害事件は、上記の例とは性質が異なるものだ。
特撮ヒロインが別れ話から絞殺の惨劇
テレビドラマに主演した女優が殺されたことがある。
1960年代から児童モデルとして活動していた菊容子という女優がいた。彼女は、1968年に竜雷太主演の青春ドラマ『でっかい青春』(日本テレビ系)に生徒役としてレギュラー出演し、知名度をアップさせた。
その代表作といえるのが、石森章太郎(当時)原作の特撮テレビドラマ『好き! すき!! 魔女先生』(TBS系)だ。菊が演じたのは、宇宙のかなたから地球にやってきて小学校の教師を務めるヒロイン・月ひかる。タイトル通り、当初からひかるは魔女だという設定だったが、番組途中から、彼女が正義のヒロイン「アンドロ仮面」に変身して悪者と対決する内容にリニューアルされた。
同番組終了後は、NHKのクイズ番組『連想ゲーム』に1年間レギュラー出演。その後も、テレビを中心に多くの作品に出演していた菊だったが、1975年4月、新宿コマ劇場での水前寺清子主演舞台公演「姉ちゃん仁義」出演期間中に、まさかの最期を迎えた。
4月29日午前3時頃、自宅で、別れ話がもつれていた交際相手(俳優)に電話機のコードで首を締められ殺されたのである。24歳であった。加害者は犯行後に自殺未遂を図るが死にきれず、その後、警察に逮捕された。
作詞家転向の元アイドルが惨殺された
1967年に『レ・ガールズ』(日本テレビ系)という音楽バラエティ番組が放送スタートした。これは、西野バレエ団の精鋭メンバー5人で結成されたグループ「レ・ガールズ」の冠番組だった。5人は人気者となり、その後、映画『ミニミニ突撃隊』(1968年)、テレビドラマ『フラワーアクション009ノ1』(1969年・フジテレビ系)といった作品にも主演するなどしている。
若くて、容姿端麗で、歌とダンスがうまく、芝居もこなす5人組。それ以前に、日本の芸能界にこの手のグループは存在せず、彼女たちが、現在のさまざまなグループアイドルの源流だという見方もある。
5人のうち、由美かおる、金井克子、奈美悦子は、その後も芸能界で長く活躍することになるが、最年少メンバーの江美早苗は、若くして悲劇的な最期を迎えている。
ソロとしても、『新婚さんいらっしゃい!』(テレビ朝日系)の初代司会者を務め、映画『呪いの館 血を吸う眼』(1971年)のヒロインを演じるなど順調な芸能活動を送っていた江美だが、21歳で引退。やがて、「中里綴」というペンネームで、作詞家に転向する。
こちらの活動も成功し、1970年代アイドルの南沙織から始まり、1980年代には堀ちえみ、中森明菜などに詞を提供していた。また、「神田エミ」という名義で、少年隊のミュージカルのための楽曲に詞を書いたこともあった。
そんな彼女を、突然、不幸が襲う。1988年3月5日、自宅マンションに侵入した男に、登山ナイフなどで全身を20箇所以上めった刺しにされ、36歳の若さで亡くなってしまうのだ。作詞家としても、まだまだこれからという時期であった。加害者は、以前からつきまとい行為を繰り返していた元配偶者だと報道された。
2013年にはタレント活動中の18歳が
このほか、2013年10月には、東京都三鷹市で芸能プロダクションに所属しタレント活動をしていた10代の女性が、リベンジポルノをネット上にばらまく等のストーカー行為を繰り返していた元恋人の男に刃物で首を斬りつけられ、18歳で他界するという悲劇もあった。この事件は、のちのいわゆる「リベンジポルノ被害防止法」成立のきっかけになるほど、当時社会的な関心を集めた。
以上3例はいずれも、一度は恋愛関係になった相手によるストーカー的な行為がエスカレートしたパターンである。それぞれの加害者に、それぞれの複雑な感情があったのだろう。だが、相手が芸能人であろうとなかろうと、人の命を奪う行為は決して許されるものではないのである。