なぜ成果主義は失敗するのか?売上、利益…間違った「財務的」成果主義を捨てよ
最近、なにかと「働き方」に注目が集まっている。ひとつの象徴的な出来事は、政府が肝いりで進める脱時間給制度、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションの導入だ。関連する労働基準法の改正法案は4月に閣議決定し、今後2016年4月の施行を目指して準備が進められている。
背景にあるのは、日本企業の生産性の低さだ。日本生産性本部によれば、日本の労働生産性は主要7カ国(G7)の中で1994年以来万年最下位だ。なかでも、ホワイトカラーの生産性向上は急務となっている。そのひとつの方策が、ホワイトカラー・エグゼンプションというわけだ。
脱時間給制度は必然的
現在の労働基準法では、超過時間労働に対しては一定の手当て、いわゆる残業代を支給しなければならないことになっている。しかし、この残業代は一定の前提がなければ成り立たない。それは、時間に比例して産出量が増え、増えた産出物は売れるという前提だ。個人への報酬は企業全体の富の分配である以上、富に紐づかない時間に対して報酬を支払うことはできないからだ。
これは明らかに、世の中が右肩上がりの時代における製造業を前提としたモデルだ。いまや、モノをつくれば売れる時代ではない。ましてや、非定型業務を旨とするホワイトカラーにその前提が当てはまるわけがない。少なくともホワイトカラーに関しては、労働時間以外で評価しようとする脱時間給制度は必然的な流れだ。
「成果」を何で測るかが問題
脱時間給制度となれば、成果主義もほとんど不可避となる。人を時間で評価しないとすれば、成果で評価せざるを得ないからだ。そして、個人への報酬は企業としての成果の分配なのだから、成果主義も必然的な流れなのである。問題は、成果を何で測るかである。
成果というと、通常は売上高や利益などの「財務的成果」を思い浮かべるだろう。実際、成果主義とは、売り上げなどをどれだけ上げたかによって評価することを意味するのが一般的である。
そして、成果主義にまつわる問題も、ほとんどは財務的成果主義に基づくものだ。例えば、「営業部門は売り上げを上げるから成果を明確に測れるが、売り上げを上げない経理などの間接部門は成果主義で評価するのは難しい」というようなことがいわれる。これも財務的成果主義を前提にした議論だ。
しかし、成果は財務的成果だけではない。
筆者がお勧めしたいのは「非財務的成果」だ。それは、各業務に即した行動指標に対する達成度だ。行動指標とは、例えば顧客に対する訪問回数、製造のリードタイム、不良品率などだ。