こうした中、日本ではカフェインレスコーヒー(デカフェ)が注目を集めている。健康志向の高まりを受け、妊娠中や授乳中の女性をはじめとして多くの人たちがカフェインレスコーヒーを支持している。これまでのコーヒーの歴史を振り返ってみると、現在はこのカフェインレスコーヒーを中心とした「第4次コーヒーブーム」ともいえるトレンドが広がっている。
コーヒー文化の変遷
コーヒーの歴史は10世紀初頭にまで遡るが、13世紀後期からコーヒー豆を煎って煮出す動きが出始める。その後、イスラム圏からキリスト教圏へと広がり、さらに南北アメリカ大陸にも波及した。日本でも19世紀以降に飲用体験が記録されるなど、コーヒーを楽しむ文化が世界的に拡大していったことがわかる。
さらに戦後、日本ではコーヒー飲用が大きく拡大する時期となった。1960年にコーヒー生豆の輸入が全面自由化され、さらに翌61年にはインスタントコーヒーの輸入が自由化されたことで、世界的なコーヒーメーカーであるネスレをはじめとした国内外のメーカーが日本で製造や販売を始めた。これらの動きが日本のコーヒーブームに火をつけることになる。60年代から80年代にかけて盛り上がった「純喫茶」ブームもその流れのひとつといえよう。
その後、96年に東京・銀座にスターバックスコーヒーの1号店がオープンし、翌年にはタリーズコーヒーがオープンするなど、味はおいしく、おしゃれに持ち歩いて飲むアメリカ・シアトル系コーヒーのブームが到来した。
さらに、2008年にはマクドナルドの100円コーヒーが登場し、おいしくて安いコーヒーのトレンドが訪れることになる。この流れはいわゆる「コンビニコーヒー」へとつながり、本格的な味わいのコーヒーを店頭で気軽に買えるようになったことにより、コーヒー愛好者のすそ野を大いに広げる結果をもたらした。
その一方で、アメリカから上陸したブルーボトルコーヒーに代表されるように、一杯一杯をじっくり味わうスタイルも出現し、コーヒーの飲み方に消費者のさまざまな価値観が反映される時代となった。
第4次コーヒーブーム到来?
そして今、昼間は普通のコーヒー、そして夕方以降はカフェインレスコーヒーを選ぶといったイメージでコーヒーを選択する「飲み分け」の動きが出て、カフェインレスが第4次コーヒーブームを牽引している。スターバックスやタリーズコーヒーなどの大手チェーンでもカフェインレスコーヒーを提供するほか、おいしく飲む講座などもコーヒー愛好者の人気を集めている。
この動きは実際に統計にも表れており、デカフェ豆の輸入量は12年に1183トンだったのが、14年には2020トンにまで伸びている。岡山県にはデカフェの専門店も生まれている。ネスレは、カフェインレスコーヒー市場で7割のシェアを誇っており、同社の「ネスカフェ ゴールドブレンド カフェインレス」というブランドは10年前と比べて14年は販売量が約1.6倍に増加したという。
戦後70年で日本でのコーヒーの飲み方も大きく変わったといえる。夏もようやく終わり、これからは温かいコーヒーの季節。歴史を振り返りながら、秋の夜長においしいカフェインレスコーヒーを楽しむのもよさそうだ。
(文=編集部)