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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

世界的ヒット「獺祭」生んだデータ分析はパート女性?データサイエンティストは不要?

文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員

獺祭のデータ解析を担う、パートの女性たち

 獺祭(だっさい)という日本酒をご存じだろうか。「日本酒が売れない時代」といわれる中、旭酒造が製造する純米大吟醸酒・獺祭は国内外で爆発的な人気を博している。2014年度の売上高は約46億円。米国やフランスなど24カ国に輸出されており、同年に来日したオバマ大統領に安倍晋三首相が贈ったのもこの獺祭だった。

 この旭酒造の酒造りは非常にユニークだ。通常、日本酒の酒造りは杜氏(とうじ)という職人の経験や勘に支えられて行われるが、旭酒造は1990年代後半にレストラン経営など事業拡大の失敗で杜氏に逃げられてしまったことをきっかけに、杜氏のノウハウに頼らない、データによる酒造りを開始した。

 具体的には、洗米の段階では米の重量、洗う時間、水温などをすべて数値で計測、米
に吸収される水分量を0.3%以下の精度で調整する。醗酵の段階では、アルコール度数、日本酒度、糖度などを毎日計測し、それを毎日手書きでグラフにすることで、その日に記録したデータから醗酵の進み方を分析して次の日の温度管理などを判断する。ほかにも、酒造りのあらゆる工程で詳細なデータを蓄積し、その分析から最適な打ち手を導き出すという製造手法を確立させた。

 また、「機械がどんどん進歩している今、データ解析自体はそれほど難しいことではない」と旭酒造の桜井社長が言うように、この製造手法の心臓部でもある日々のデータ解析の大半は、今ではパートの女性が担っているのだ。

「すかいらーく」のデータ分析チームが、Excelよりも重視するもの

 ガストやジョナサン、バーミヤンなどの外食チェーンを傘下に置き、日本全国に約3000店舗を展開するすかいらーくグループ(以下、すかいらーく)も、この数年データ分析・活用を強化することで、増収増益を実現させている。

 その中核の組織として、マーケティング本部内に「インサイト戦略グループ」と呼ばれる20名弱のデータ分析の専門チームがある。メンバー全員がデータ分析に長けたデータサイエンティストのような集団かというとそうではない。それどころか、多くが店舗の現場で経験を積んできた人材であり、チームに入るまではExcelにほとんど触ったことがないというメンバーもいるそうだ。それでも、単なる分析で終わらずにプロモーションやメニュー開発など他部署の人と連携した具体的なアクションにつながることを重視し、そのような人材が集まっているのである。

村澤典知

村澤典知

インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員。一橋大学経済学部卒。トヨタ自動車のグローバル調達本部では、調達コスト削減の推進・実行を中心に、新興国市場での調達基盤の構築、大手サプライヤの収益改善の支援に従事。博報堂コンサルティングでは、消費財・教育・通販・ハイテク・インフラなどのクライアントを担当し、全社戦略、中長期戦略、マーケティング改革、新規事業開発、新商品開発の導入等のプロジェクトに従事。A.T.カーニーでは、消費財・外食・自動車・総合商社・不動産・製薬業界などの日本を代表する企業のグローバル成長戦略、中期経営計画、マーケティング改革(特にデジタル領域)、M&A、組織デザイン、コスト構造改革等のプロジェクトに従事。2014年より現職。大手メーカーや小売、メディア企業に対し、データ利活用による成長戦略やオムニチャネル化、新規事業開発に関する戦略策定から実行までの支援を実施。


株式会社インテグレート

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