「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数ある経済ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。
今シーズンのプロ野球も大詰めを迎えた。パシフィック・リーグは独走した福岡ソフトバンクホークスのリーグ優勝が決まったが、セントラル・リーグの優勝争いは大混戦。リーグ戦上位3チームまでが出場する、クライマックスシリーズ出場権をかけた戦いも白熱している。
優勝争いをする人気球団の主催試合における観客動員数は順調で、以下のとおり2012年から3強の順位に変動はない。
【観客動員数】
・読売ジャイアンツ(巨人):70試合時点295万4855人、1試合平均4万2212人
・阪神タイガース:69試合274万3276人、同3万9758人
・福岡ソフトバンクホークス:68試合時点240万9049人、同3万5427人
実は、それに続くのが、巨人や阪神に比べて本拠地周辺の人口規模では大きく劣る広島東洋カープ(68試合時点201万5020人、1試合平均2万9633人)だ。数年前は上位にいた中日ドラゴンズや北海道日本ハムファイターズを抜き去っている。
昨年、カープは球団史上初めて観客動員数が190万人台(72試合)に達したが、今年はすでにその数字を超え、最終的には210万人を超える勢いだ。理由として考えられるひとつが、本拠地「Mazda Zoom-Zoomスタジアム広島」(以下、マツダスタジアム)の人気である。そこで今回は、マツダスタジアムの魅力を中心に分析してみたい。
優勝への期待に、黒田・新井の復帰が火をつけた
「黒田も新井も帰ってきた」
今年の春、マツダスタジアム近くの店に、こんな幟が掲げられていた。黒田は14年まで米大リーグのニューヨーク・ヤンキースに所属していた黒田博樹投手、新井は同じく阪神タイガースに所属していた新井貴浩内野手のことで、いずれも元カープの選手だ。
14年のシーズン終了後にヤンキースからフリーエージェント(FA)となった黒田投手には、ロサンゼルス・ドジャースやサンディエゴ・パドレスが巨額の年棒オファーを出したが(推定18~20億円)、それを蹴って古巣のカープと契約(同4億円)。阪神で出場機会が減っていた新井選手は、新天地を求めて古巣に復帰した。
「13、14年は3位となり、2年続けてクライマックスシリーズに出場しました。今シーズンは優勝への期待が高まっていたところに黒田投手、新井選手の復帰があり、シーズン当初から非常に盛り上がりました」(カープ広報担当)
開幕前は優勝候補に推す評論家もいたが、開幕後はなかなか調子が上がらず現時点では4位だ(9月29日)。それでもファンの熱気が冷めないのは、球団や自治体などが進めた地道な努力も大きい。