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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

「抗菌」家電&グッズは人体に危険!かえって乱用で強力な菌が繁殖する恐れ

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「Thinkstock」より
 抗菌グッズというのは、製品に各種の消毒剤や抗菌作用のある物質を混ぜて弱い殺菌能力を持たせたグッズのことです。

 これは、もともと医療用に開発されたものです。寝たきりの人や、手術を受けた直後の人は免疫力が極端に落ちているので、肺炎球菌のような普段身の回りにも多く存在する細菌に感染して肺炎になったり、ほかのありふれた細菌に感染して敗血症になったりします。

 このような方が抗菌シーツや抗菌パジャマを使えば、身の回りに存在する細菌を一時的に減らすことができるメリットがあります。また手術を担当するドクターやナースにとっても、抗菌手袋やマスクは患者さんの感染症を減らす一助にもなるため、抗菌グッズはもっぱら医療の現場でニーズがありました。

 そんな状況が一変したのが、1996年の腸管出血性大腸菌O-157騒動でした。このときはメディアに菌の怖さを煽る情報が氾濫し、日本中が“菌恐怖症”に陥った感がありました。これに便乗したのが販路の拡大に悩んでいた各種の製造業です。

 家電メーカーは、早速冷蔵庫や洗濯機、掃除機などに抗菌機能を持たせ、トイレ回りやお風呂回りの製品も「抗菌」という冠を付けないと売れなくなったほどです。

 マスクや綿棒も多くの商品が抗菌になり、下着、靴下にも抗菌素材が使われるようになりました。菌恐怖症になる人は小さい子を持つ母親層に多かったので、キッズマーケットでは抗菌ランドセル、抗菌学習机、抗菌ノート、抗菌消しゴムまで続々と登場して飛ぶように売れました。

抗菌グッズにメリットはない

 このようなニーズの拡大で抗菌グッズの市場規模は膨れ上がり、現在は1兆円を優に超えているともいわれています。筆者は、そんな抗菌グッズ市場は日本ならではの“気休め産業”だと考えています。健康な人が使ってもメリットはないのに、買う人は病気の予防効果があると思い込んでいるからです。

 みなさんの中には、「特に害がないならいいじゃないか」とお考えになる方もいらっしゃると思います。確かに、害がなければうるさく言う必要はありません。抗菌グッズを病気除けのお守りと考えればいいだけです。

 しかし、抗菌グッズの乱用は、多剤耐性菌の氾濫という怖い事態を引き起こす可能性が高いのです。

 抗菌グッズには強い殺菌効果はありません。強力な殺菌効果を持たせてしまったら、アレルギー性の皮膚炎が多発する恐れがあるからです。大半は、接触する部分に存在する細菌を一時的に減らす効果しかありません。そして、これが怖い結果を招くのです。「菌」というものは、強力な攻撃でなくても生存を脅かされると耐性を獲得して、より強力なものに変身することがあるからです。

 耐性を獲得した菌は、抗菌物質が入り込んでも、すぐにそれを排除してしまいます。これが耐性菌です。抗菌グッズを乱用すればするほど、自分の身の回りにこうした薬の効かない菌が増えるのです。これらの菌は、あなたが元気なうちはおとなしくしていますが、病気などで体力が弱ったときに暴れだすことがあります。

 そうなったら大変です。抗生物質が効かないため苦戦は必至で、最悪、命を落とすことになりかねません。

 こうしたリスクもはらんでいる抗菌グッズ。乱用することで私たちが自らを危険にさらさないように、その抗菌グッズが本当に必要なのか、もう一度考えてみませんか。
(文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士)

●宇多川久美子 薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)など著書多数。

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