激化する米中ハイテク戦争
中国は、習近平国家主席が掲げる「中国製造2025」の政策の下、2017年時点で13.4%しかない半導体の自給率を、2020年に40%、 2025年に70%に引き上げることを目標にしている。
一方、「中国製造2025」を警戒する米国は、それを叩き潰すためにハイテク戦争を仕掛けている。その一環として2018年12月1日に、中国通信機器メーカー華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が、米国の要請によりカナダのバンクーバーで逮捕された。
米国の攻撃のターゲットは、通信機器メーカーだけでなく、半導体メーカーにも及んでいる。特に、台湾UMCと技術提携してDRAMの量産を計画しているFujian Jinhua Integrated Circuit Co(JHICC)に対しては、米商務省が米国製の製造装置の輸出を禁止するなど、激しい攻撃が行われている。
本稿では、まず中国で計画されている半導体工場の立ち上げ状況を整理する。次に、米国によるJHICCへの攻撃を詳述する。その上で、このような攻撃が中国の半導体産業にどのようなインパクトを与えるかを考察する。筆者は、「米国の攻撃は、中国半導体産業の勢いを一時的にスローダウンさせるかもしれないが、中長期的に見れば、その攻撃が中国半導体産業の成長を加速させるかもしれない」と推論した。
中国で建設が計画されている半導体工場
中国は「中国製造2025」の下、前述の通り半導体の自給率を引き上げることを目標にしている。その計画を実現すべく、中国は以下の半導体工場の立ち上げを計画している(図1)。
紫光集団傘下の長江ストレージ(旧XMC)は、2016年春に240億ドルを投じて、2020年までに月産10万枚の3次元NANDフラッシュメモリのファブを3棟建設し、2030年には月産100万枚規模に拡張すると発表した。2017年には第1棟が完成し、2018年には装置が搬入されつつある。また、既存のNORフラッシュメモリの月産2万枚のラインを使って進めていた32層の3次元NANDは歩留りが50%を超え、サンプル出荷を開始し、次は48層をスキップして64層の試作を開始しており、その動作にも成功している。
また、DRAMでは、紫光集団が四川省成都に、JHICCが福建省泉州に、イノトロン(旧RuiLi、旧Hefei Chang Xin))が安徽省合肥市に、それぞれ最先端1Xnm用の巨大工場を建設すると発表している。