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小笠原泰「日本は大丈夫か」

日産、ルノーによって日本人取締役“全員解任”の最悪シナリオも現実味

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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日産、ルノーによって日本人取締役“全員解任”の最悪シナリオも現実味の画像1ゴーン容疑者が出廷 勾留理由開示手続き(写真:ロイター/アフロ)

 今回は、これまでの本連載での議論を前提に、国家を巻き込んだルノー日産自動車の闘争はどのように着地するのかを検討してみたい。

今後の展開予想

 6月末の株主総会とそれまでの半年が、今後の展開の節目だろう。日産元会長のカルロス・ゴーン氏が保釈されて自由に発言することは、日本側にとって交渉上不利になるので、できるだけ長く、株主総会前まで勾留が続いてほしいというのが、日産の日本人経営者とその背後を含めたオールジャパンの本音だろう。

 その意味では、昨年末の東京地裁による異例の勾留延長申請却下と準抗告棄却、そしてケリー氏の保釈はオールジャパンにとって想定外であり、ショックは大きかっただろう。今度は17日にゴーン氏側の準抗告が東京地裁によって棄却され、ゴーン氏側は20日、東京地裁が2回目の保釈の可否を判断するのを前に「あらゆる条件」を受け入れるとして、保釈を認めるよう強く訴える声明を米国で出した。しかし、22日に18日付けの再度の保釈請求も却下されたことで、依然先の見えない勾留は続いている。

 ルノーサイドは政府主導でゴーン氏の後任選定を早急に行うと表明しており、ルノーに関与するフランス政府関係者も来日して、日本政府関係とも話し合ったと報じられている。フランス側は資本の論理を原則として厳しく交渉に臨む態勢を強化してきており、ゴーン氏の問題は、「証拠隠滅や逃亡の恐れ」という説得力のあまりない理由による先の見えない勾留状況が続くことで国際的な人権問題に発展するだろう。もはや、ルノーと日産の統合問題ではなくなりつつある。つまり、オールジャパンがルノーからの自治権獲得交渉を有利に進める前提としていたゴーン氏の長期勾留は、急速に意味をなさなくなりつつあるといえる。

臨時株主総会開催要求

 
 株主総会に至るまでのルノーの最初の一手は、想定通りの臨時株主総会開催の要求である。大株主としては当然の要求だが、日産はこれを書面で拒否している。ルノーサイドにとっては想定内だろう。ルノーは臨時株主総会の開催を再度求めたが、日産はこれも拒否している。

 この拒否の背後には、ルノーと日産の間に交わされた修正アライアンス基本契約(RAMA)がある。しかし、もしRAMAの有効性に疑義が挟まれるとすると、ルノーは株主として横浜地裁に臨時株主総会招集許可の申し立てを行うことができ、許可されれば開催される。このシナリオは実現はしないだろうが、ルノーが開催を要求してきたことは、日産の日本人経営陣が考えるようにはことを進ませないという、ルノー側の強い意志表示であり、相当の圧力をかけていることになる。

日産取締役会のガバナンス欠如

 次に想定されるルノーの動きは、日産のガバナンスの欠如を追及することである。日産側がガバナンス欠如の責任をすべてゴーン氏に帰することは、小学生の論法であり、グローバルな上場企業としてはまったく通用しない。ゆえに、東京地検特捜部も遅ればせながら日産を起訴するしかなかった。ゴーン氏を切ったからといって、日産の交渉力が上がったわけではまったくない。むしろ、ルノー側の論理では、ゴーン氏不在であり、かつガバナンスのきかないことが明白になった日産において、日本人経営者主導の取締役会の影響力を高めることは望ましくないと主張するのは当然だ。

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