「私たちは、加盟店オーナーという奴隷になりました」――こんな衝撃的な言葉で始まるのが、2018年9月に出版された『コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実』(旬報社/コンビニ加盟店ユニオン、北健一)だ。
コンビニエンスストアのフランチャイズ店の過酷な労働実態と本部の理不尽な対応を明らかにする同書は、「本部だけが儲かる『廃棄』の数値目標が設定されている」「人気のフライヤー商品が売れても加盟店は潤わない理由」「本部は『契約更新拒否』を脅しに使う」「本部に利益が吸い上げられる『コンビニ会計』のカラクリ」などを伝えた上で、「これは現代の奴隷制度なのか?」と警鐘を鳴らす。
折しも、セブン-イレブンの東大阪南上小阪店が人手不足から未明の営業を取りやめたことで、セブン-イレブン・ジャパンと対立する問題が起きている。同店では、オーナー・松本実敏氏と一緒に働いていた妻が18年5月に亡くなり、松本氏が連続16時間超の勤務を強いられることになったため、やむを得ず営業時間を短縮する措置を取ったところ、本部から契約解除と違約金1700万円を求められたという。時短営業には、本部と加盟店との間に「特別な合意」が必要だとされている。
松本氏は2月27日に本部を訪れ、コンビニ店のオーナーでつくるコンビニ加盟店ユニオンも同日に本部へ団体交渉の申し入れを行った。その後、松本氏とユニオンが行った記者会見で、ユニオン側は松本氏の事例や18年2月の福井豪雪でオーナーが丸2日間以上寝ずに店番をしたケースを挙げ、「生命の危機的状況」と指摘。「契約の運用実態が、何がなんでも24時間営業を続けなければならないという非人道的なものであるならば、もはや公序良俗に反し、契約自体が無効と判断されるべきだ」と主張した。
人命より契約を優先するかのような本部の対応
ユニオンの前副委員長でセブンのオーナーを9年間務めた経験を持つ三井義文氏は、「もちろん、(24時間営業を定めた)契約は尊重しないといけない。ただ、世の中の情勢は変わっていくわけですから、本来であれば環境の変化に応じて双方で話し合いを行い、契約の内容を見直していくべきです。そして、将来に向けて永続性のある経営を可能にするための仕組みづくりを行っていくべきです。しかし、セブンの契約内容は当初からまったく変わっていない。本部の社員も、そう言っているのが実情です」と語る。
「本部は何かと契約書を盾にするが、たとえば時短営業を認める『特別な合意』についても具体的な条件は一切書かれていない。そして、今や現場は契約書通りにやったら死ぬかもしれないという事態になっているのに、いまだに契約主義を貫くのはおかしいですよ。今一度、『契約は命より重いのか』という問いを突きつけたい。これはコンビニだけではなく、労働契約もそうですし、企業間の元請けと下請けの関係などもそうでしょう。弱いものは潰れてもいいなんていう社会が幸せなはずがありません」(三井氏)
『コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実』 これは現代の奴隷制度なのか? なぜかYou Tubeからすぐに削除される動画『衝撃!コンビニの現場』をもとに、その苛酷な実態を取材。絶対に知られたくない、現代ニッポンのリアルがここにある!