ジャパンディスプレイ(JDI)の経営は、一段と難しい状況を迎えている。JDIは、自社の判断で新しい取り組みを進め、収益力の回復を目指すことがかなり難しくなっているようだ。JDIは、2019年3月期の連結最終損益が5期続けての赤字になる見込みであると発表した。これまでの同社の決算を振り返ると、同社は世界経済の変化に対応する力を低下させてきたといわざるを得ない。
最大の原因の一つは、同社の経営陣が、3つの企業のディスプレイ事業の統合によって発足したJDIを一つに結束させることができなかったことだろう。JDIは米アップルの成長を当てにし続けた。iPhoneの販売不振を受けてJDIの収益性と財務内容が急速かつ大幅に悪化したのは、避けようがなかったといえる。
現在、同社は資金繰り確保のため、技術力の吸収を狙う台中の企業連合からの出資に頼らざるを得なくなっている。わが国が磨き、蓄積してきた液晶などのパネル(ディスプレイ)技術が、海外に流出しようとしているともいえる。わが国の企業は同じ失敗を繰り返してはならない。
“日の丸液晶”を目指したJDI
1990年代後半まで、わが国は“世界の液晶大国”だった。1999年の時点で世界の液晶パネル市場において、わが国の電機メーカーは50%超のシェアを確保していた。この背景には、わが国の企業が世界のカラーテレビ市場で大半のシェアを握っていたことが強く関係している。
しかし、2000年代に入ると韓国メーカーを中心に、新興国の企業が急速にシェアを伸ばし始めた。背景には、先進国企業の海外進出とともに新興国企業が技術を吸収したことなどがある。それに伴い、液晶テレビ、ディスプレイ、パソコン、半導体など広範なエレクトロニクス製品市場で「コモディティー化(完成品を手掛けるメーカーが違っても、価格以外の点で大きな差がなくなること)」が進んだ。市場参加者のなかには、台湾と韓国の株価の動きは世界の半導体や液晶パネル市場の状況をよく示していると指摘する者
も多い。
JDIは、わが国のパネル(ディスプレイ)産業の威信をかけ、その競争力の向上を目指して設立された。同社は、INCJ(旧産業革新機構)の主導で日立製作所(日立ディスプレイズ)、東芝(東芝モバイルディスプレイ)、ソニー(ソニーモバイルディスプレイ)の中小型ディスプレイ事業を統合して発足した。2012年4月にJDIは事業を開始し、世界の中小型パネル市場で10%程度のシェアを持っている。また、同社の売り上げの80%程度がスマートフォンなどのモバイル端末向け液晶ディスプレイから得られている。