漂流するJDI
JDIが自力で経営の再建を進めることはかなり難しい状況にある。JDIは生き残りをかけて、INCJに加え、海外の企業や投資家からの資金調達を目指さざるを得なくなった。すでに、台中の企業連合が、JDIに最大800億円の金融支援を行うことで大筋の合意に達したとの報道がなされている。
仮に台中企業連合からの資金支援が実現したとしても、JDIの経営再建は一筋縄ではいかないだろう。なぜなら、中国は米国との通商摩擦に直面しているからだ。同社は、利害関係者の思惑や、世界経済の動向に左右されていくだろう。JDIの経営見通しは、かなり不透明である。
何よりも見逃せないことは、海外企業によるJDIへの資金支援が実現すると、わが国の技術が海外に流出する恐れが高まることだ。すでに電機大手のシャープは、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り、経営を立て直してきた。シャープが蓄積してきたノウハウなどは、ホンハイに流出した。わが国企業の技術力などが海外に流出し続けると、経済の成長基盤は脆弱にならざるを得ない。
わが国の企業は、JDIの教訓を活かさなければならない。その教訓とは、企業は自力で経営の持続性を高めなければならないということに尽きる。官民ファンドに経営再建のノウハウがあるとも限らない。むしろ、JDIのケースを活かし、わが国の官民ファンドに企業の再生を実現する手腕があるか否か、もしないのであれば何が必要かが検証されなければならない。
わが国の企業は、常に新しい発想を取り入れて、従来にはない製品の創造を目指すべきだ。それが、“イノベーション”だ。それができないと、企業の収益力は低下し、持続的に成長を目指すことが難しくなる。収益確保のためにリストラを続けることもできない。
技術力などを目当てとする海外企業に出資を求めることができたとしても、わが国の発想(価値観)に基づいた経営を行うことは難しくなる。これは、従業員や地域社会をはじめ、わが国の経済にとって大きな損失だ。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)