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ハウステンボス澤田社長、電撃退任の裏にスキャンダルか…HIS子会社から10億円借金

文=編集部
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ハウステンボス澤田社長、電撃退任の裏にスキャンダルか…HIS子会社から10億円借金の画像1ハウステンボス・澤田秀雄社長(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 長崎県佐世保市の大型リゾート施設、ハウステンボス(HTB)は5月21日に臨時株主総会を開催し、澤田秀雄社長の退任を決める。澤田氏は代表権のない会長に退き、後任社長には坂口克彦エイチ・アイ・エス(HIS)取締役常務執行役員兼ハウステンボス最高人事責任者が就任する。

 澤田氏は親会社の旅行大手、HISの会長兼社長も務めている。HTBは2~3年後に東京証券取引所への上場準備を進めている。上場に当たって、澤田氏が2社の代表取締役を兼務することができないため、ユニ・チャームとHISで経営に携ってきた坂口氏に上場の実現を託す、と報じられた。

 澤田氏は2010年に経営危機に陥っていたHTBを傘下に収めると、9年間にわたって社長を務めた。季節に合わせたイベントを次々と導入。大規模なイルミネーションや花火、仮想現実(VR)技術を使ったアトラクションを打ち出し、HTBを再建した。

 HTBの経営が軌道に乗ってからは「僕がいなくても発展させる体制をつくるのが次の仕事」と述べるなど、社長を退く意向を滲ませてきた。

 18年12月3日、HTBの決算発表の席上、「3年後をメドに東証1部に上場する。中国の投資会社、復星集団(フォースングループ)から約25%の出資を受け入れる」と明らかにした。

 HTBの18年9月期決算(単体) は、売上高に当たる取扱高が前年比2.7%減の283億円、純利益は16.4%減の55億円と減収減益となった。猛暑だった影響で入場者数は272万2000人と前年より5.5%減った。海外客は、全体の7%弱の18万4000人で中国は2万人だ。

 入場者は15年9月期の 310万人がピーク。16年の熊本地震、17年の九州北部豪雨の影響で入場者数は年々減少してきた。澤田氏も「立地的に300万人からは大きく伸びない」とみている。

「復星集団は中国から年20万人の送客を提案してきている」と説明した。海外からの入場者数(18万4000人)を上回る規模だ。成長が見込める中国からの集客を強化するのが狙いだ。

 HTBの株式は現在、親会社のHISが3分2、九州電力、JR九州など福岡の5社が計3分の1を保有。各社が持ち株の一部を売却し、HISが50.1%、福岡経済界が25%、復星集団が24.9%とする方向で調整していた。

 ところが2月12日、復星集団と進めていた出資協議を中止した。両社とも理由を明らかにしていない。そして、澤田社長はHTB社長を辞任する。臨時株主総会を開いてまで辞任する理由は何か。

 5月15日、HTB社長として最後の記者会見に臨んだ澤田氏は「HISの経営に集中するため、代表権のない会長に退く」と述べ、「そろそろ僕のアイデアも尽きてきたので、新しい社長(坂口氏)に新しい大きなイベントをやってもらいたい」とした。

 これについて、“ある事件”の責任を取ったと見る向きが多い。

HIS株を担保にハウステンボスから借り入れ

 今年に入り澤田氏の身辺はきな臭くなった。

 会員制情報誌「FACTA」(3月号/ファクタ出版)が『澤田H.I.S会長が利益相反 「自社株43億円」担保差し入れ』との記事で、「同氏がハウステンボスに巨額の債務を負っている事実が判明」と報じた。

 同誌によると、澤田氏は1月17日、大量保有報告書を提出。1月11日付でハウステンボスと株式質権設定契約を結び、保有するHIS株107万3600株(発行済み株式の1.57%)を担保に差し入れた。契約日のHIS株の終値は3975円。担保に差し入れた株式は約43億円に相当する。

 HISの有価証券報告書によると、澤田氏は18年10月末時点でHISの子会社から10億5400万円を借り入れている。その後、借入額が増え、19年1月11日に至ってHIS株を担保に差し入れざるを得なくなったと考えられる。「FACTA」は「経営者が自らの会社からカネを借りるのは明らかな利益相反取引である」と糾弾した。

 なぜ、澤田氏はHTBから借金をしたのか。18年暮れから関係者の間で話題になっていた事件がある。「澤田氏がM資金まがいの50億円の詐欺被害に遭った」というものだ。

リクルート株投資をめぐる詐欺事件

 澤田氏が50億円の詐欺被害に遭ったとされる事件の概要は、以下のとおりだ。

 18年2月、HTBが電子通貨(テンボスコイン)を企画した際、テンボスコインの裏付けとなる金の調達を一手に引き受けた金取引会社の石川雄太社長のもとに持ち込まれた話が発端だったという。

「リクルート創業者の江副浩正氏が安定株主対策として預けた株が、財務省に大量に保管されている。財務省とリクルートの承諾があればワンロット50億円といった大口に限り、市価の1割引程度で入手できる」という触れ込みだった。

 瞬時に5億円の利益がもたらされるという、およそ眉唾といったたぐいの話だが、石川氏はワンロットの購入を決めた。澤田氏に相談して資金提供を受けたとされる。

 リクルートホールディグス株の投資は18年5月から、詳細は省くが3回に分けて行われた。当然のことだが、リクルート株が購入できるはずもなく、50億円は消えてしまった。

 石川氏は18年11月、58億3000万円の支払い求めて、東京地裁に提訴。被告は数々の詐欺事件で名を馳せたといわれている8人で、現在公判中である。石川氏は詐欺グループのカモになり、石川氏に50億円を提供したのがハウステンボスの澤田秀雄氏だったといわれている。

ハウステンボスは長崎県警に被害届を提出

 詐欺被害の原資が澤田氏の要請によってHTBから出ているとすれば、上場に向けて準備中のHTBにとって上場審査をパスできなくなりかねない不祥事だ。

 澤田氏は3月1日、HIS株120万株を売却。約53億円を得てハウステンボスとの債権債務を解消。同時にHTBに対する担保差し入れは解除となった。

 債務は穴埋めされたとはいえ、事をうやむやにすることはできない。2月末、HTBは長崎県警に被害届けを出した。

 百戦錬磨の経営者である澤田氏が、もしM資金まがいの胡散臭い投資話に乗ったというのが事実であれば、最大のミステリーだ。

 澤田氏が推進してきたカジノを含む統合型リゾート施設(IR)についても、HTBは「土地は提供するが、運営には加わらない」方針に転換した。

 HTB社長を退いた澤田氏が、HISの会長兼社長を続けるのかどうかが後の焦点となる。一連のスキャンダルが事実か否か、説明はいまだなされていない。
(文=編集部)

【続報】

 5月15日に発表した18年10月~19年3月の連結決算(19年9月期の中間決算)の売上高は前年同期比32%減の150億円、営業利益は同20%減の28億円と減収減益となった。澤田社長は「売り物だった大型の新イベントをやらなかったことが最大の要因」と説明。香港や台湾、韓国から団体で訪れる訪日外国人(インバウンド)などが低迷、入場者数は同7%減の130万4000人にとどまった。連結子会社だったエネルギー会社などの株式を親会社HISに売却したことも影響した。

 19年9月通期の入場者数は5%減の258万人を見込む。澤田氏は 「今後は大規模イベントを再開し、国内外から来場者を呼び込みたい」と語る。会見には5月21日に新社長に就任する坂口克彦・最高人事責任者も出席。「自分は凡人。カリスマ性の高い澤田氏のマネはできい。組織運営に転換することが必要」と強調。顧客満足度や従業員満足度の向上や地域との連携、環境を重視した観光ビジネスを進めると、抱負を語った。早くも“脱澤田”の動きが表面化した。

BusinessJournal編集部

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