
ラーメン店「幸楽苑」を展開する幸楽苑ホールディングス(HD)が試練に立たされている。10月の国内直営既存店売上高は、前年同月比30.7%減と大きく落ち込んだ。それ以前は好調で、9月こそマイナスだったものの、8月まで11カ月連続でプラスとなっていた。このように少し前までは好調に推移していたが、ここにきて急ブレーキがかかったかたちだ。
10月は台風19号が大きく影響した。台風19号は土砂災害や河川の氾濫などを引き起こし、東日本を中心として各地に甚大な被害をもたらした。これにより、幸楽苑HDも甚大な被害を被った。福島県郡山市にある本社工場が浸水し、10月13日から操業停止を余儀なくされたのだ。また、この影響で東北を中心に約240店が休業に追い込まれた。これは全店のほぼ半数にあたる。
こうした状況を受け、神奈川県小田原市にある小田原工場で増産を実施し、郡山工場が管轄する店舗に食材を供給した。これにより、休業中の店舗の営業を順次再開することができた。ただ、休業の影響に加え、営業を再開した店舗の消費者への商品提供がしばらく通常の6割程度にとどまる状況が続いたことから、郡山工場が管轄する店舗の客数は大幅に落ち込んでしまった。
また、小田原工場は郡山工場管轄店舗に食材を提供しなければならなかったため、小田原工場が管轄する店舗において「塩野菜たんめん」などの人気メニューが販売できないという事態に陥った。そのため、同工場管轄店舗の客数も落ち込んだ。
こうしたことが影響し、10月の既存店全体の客数は28.9%減と大きく落ち込んだ。客単価は2.4%減だった。そして既存店売上高は30.7%減の大幅マイナスとなった。
このように10月はさんざんだったが、11月4日には郡山工場が操業を再開し、12日には全店で通常営業を再開することができた。そのため、今後は客足が回復するだろう。だが、店舗が休業している間に流出した顧客の一部が戻ってこないことも考えられる。店舗の営業休止を機に、かつての客離れに苦しんでいた時代に逆戻りしてしまう可能性がある。