
今年10月、お笑いコンビ・チュートリアルの徳井義実が、自身が設立した会社が数年間にわたり所得申告をしておらず、東京国税局から約1億2000万円の申告漏れ等を指摘された。一方、法人税に関していえば、2018年3月決算期のグループ売上高約9兆1587億円、純利益1兆390億円を記録したソフトバンクグループが、同年度の実質的な法人税の支払いが0円だったことが注目され、話題を呼んでいる。
そこで今回は、大企業による法人税回避のカラクリや、それに対する批判が的を射ているのかについて、税理士かつ日米の公認会計士であるユアクラウド会計事務所代表の村井隆紘氏に話を聞いた。
そもそも法人税とは? 大企業と中小企業の違い
まず、「大企業が法人税逃れをしている」という批判について、村井氏はいう。
「これは難しい問題で、大企業に法人税の支払いを実質的に軽減する措置があるというのは事実ですし、国全体の傾向として大企業が優遇され、中小企業が圧迫されているのも事実です。しかしそれにはきちんと理由がありますし、なにより大企業が法律上何か違法なことをしているわけではもちろんありません。早計な判断を下す前に、法人税というものと、大企業に対する減税措置の実態を知り、そのうえで批判されるべき部分は批判すべきでしょう」(村井氏)
では、そもそも法人税とはどういったものなのだろうか。
「一般的に法人税は、株式会社などの法人の利益に対して課税される税金のこと。これに対して所得税とは、会社員の給与や個人事業主の利益に対して課税される税金をいいます。シンプルにいうと、法人税の対象は『会社の売上から経費を差し引いた儲けである会計上の利益に、税務上の調整を加えた課税所得』。
ただし、大企業に関してはこれに加えて、資本金や付加価値といったものにも課税が行われ、それらも法人税の一部とされています。ですから当然といえば当然ですが、基本的には大企業のほうが支払う法人税は多くなるものなのです」(村井氏)
では、同じ法人でも、中小企業と大企業では法人税の比率に差はあるのだろうか。
「まず、中小企業の定義は法律や制度によってさまざまですが、法人税法では、資本金が1億円以下であれば基本的には中小企業(中小法人)、資本金が1億円超であれば大企業(大法人)とされます。