米CNN日本語版は26日、『フィリピンの電力網、中国が「いつでも遮断可能」 内部報告書が警告』と題する記事を公開した。フィリピンの送電会社NGCPの株式の40%を中国の送電会社「中国国家電網公司」(SGCC)が保有していることを受け、フィリピン国会の議員向けに配布された報告書で可能性が指摘されたという。SGCCは世界最大の送電事業者として知られ、同社を中心とした国際送電網構想は日本を巻き込んで進んでいる。
中国政府の指示で電力停止可能
CNNは次のように報じる。
「報告書によれば、システムの主要素にアクセスできるのは中国人技術者のみで、理論上は中国政府の指示によって遠隔で動作を停止させることも可能だという。
中国によってこうした攻撃が電力網に行われたという前歴はない。また、喫緊にこうしたことが行われるという証拠が提示されているわけでもなく、あくまで将来的な理論上の可能性としている。情報筋によれば、内部報告書は電力網が現在、中国政府の『完全な支配下』にあり、中国政府はフィリピンの電力網に混乱を引き起こす能力を保持していると警告している。(中略)電力網に関する取り決めについては2020年の電力予算を協議するなかで懸念が持ち上がった。
上院議員の1人は、『スイッチひとつで』電力が停止する可能性に懸念を示した。復旧には24時間から48時間かかる見通しだという。別の上院議員も中国がNGCPの株を保有していることについて、『中国の最近の行動や覇権主義的な願望を考えると、国家安全保障に対する深刻な懸念だ』と述べた」
外交面では「理論上可能」というだけで十分すぎる交渉カードになる。ましてや電気は水と並ぶライフラインだ。
中国の世界送電網構想
実はSGCCはアジア圏を中心に、国際送電網の構築を進めている。同社は2015年、「グローバル・エネルギー・インターコネクション(GEI)」構想を発表。同構想に基づき、中・韓・ロ・日の4カ国の電気事業者(日本からはソフトバンクグループ)が国際送電網の構築に向けて、16年3月に合意文書を締結した。
GEIでは50年までに世界全体を高圧の送電網でつなぐことを目標に掲げる。各大陸内の国際送電網を30年までに、大陸間の送電網を40年までに構築する。アジアでは日本を含む北東アジアのほか、中央アジア・東南アジア・南アジア・中東の5地域を対象に、水力・風力・太陽光といった自然エネルギーの電力を大量に供給できる国際送電網を想定している。