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ラオックスと麻生財務相の親族企業、“東京の火葬場ガリバー”争奪戦か

文=編集部
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ラオックスの店舗(「Wikipedia」より/Musashikoganei)

 免税店大手のラオックスは、新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大で、グループ全体の1割に当たる160人の希望退職を募集する。中国人訪日客による“爆買い”が一段落したことで売り上げの3割を占めるインバウンド向け事業が苦戦しているところへ、コロナ禍がダメ押しとなった。販売体制を根本的に見直す。

 2019年12月期の連結損益は78億円の赤字(18年12月期は10億円の赤字)と2期連続の最終赤字だった。20年12月期の業績見通しは「未定」としている。ラオックスの利用者は中国政府が禁止した団体旅行客が多いのが特徴だ。「経営環境が急変し、合理的に次期の見通しを算定できない」というのが業績「未定」の理由だ。

 2月に沖縄・那覇の1店舗、北海道の2店、鹿児島の1店を閉鎖した。休業中の大阪日本橋店(大阪市)なども再開せずに、このまま閉店する方向で検討している。

 そんななか、ラオックスは別のところでM&A市場関係者の関心を集めている。東証一部上場の廣済堂にTOB(株式公開買い付け)の火種がくすぶっているが、ラオックス社長の羅怡文氏の影がちらついているからだ。

 廣済堂の筆頭株主だった旅行会社エイチ・アイ・エス創業者の澤田秀雄氏が会長を務める澤田ホールディングスは19年7月31日、発行済み株式の12.39%にあたる308万8500株を23億円強で売却した。売却先はグローバルワーカー派遣。中国語新聞の発行、中国映像コンテンツ発信の中文産業の100%子会社。中文産業は羅氏が設立し、羅氏の子息や妻が全株式を保有する羅氏の個人カンパニーだ。

 廣済堂の創業者の妻で、第2位の株主だった櫻井美江氏が、19年11月18日、保有する株式の一部を羅氏に売却した。売却後の保有比率は5.68%となり、4ポイント低下した。羅氏は個人で4%を保有する第5位の株主となった。グローバルワーカー派遣、ラオックスの元経営企画部長で廣済堂の社外取締役に就いた松沢淳氏が社長を務めるアジアゲートホールディングス(旧社名はA.C.ホールディングス)と合わせて19.72%を保有する大株主として登場してきた。

 一方、投資家の村上世彰氏が関与する投資会社レノは保有する廣済堂の株の一部を売却。20年2月4日時点で12.79%から2.41%に低下した。レノは村上氏の資産を運用する南青山不動産と共同で廣済堂にTOBを仕掛けたが、不成立に終わった経緯がある。

 レノは市場外取引で麻生(麻生巌社長)に持ち株を譲渡した。麻生は福岡県飯塚市を拠点に病院、学校を経営する麻生グループの統括会社である。巌氏は副総理兼財務相の麻生太郎氏の甥。父親の麻生泰氏は九州経済連合会会長である。麻生は従前から保有していた分を合わせ、廣済堂株の保有比率(議決権ベース)は16.56%になり、グローバルワーカー派遣(同12.41%)を上回り筆頭株主に躍り出た。

 廣済堂には多くの投資家が群がったが、最終的には、ラオックス麻生との争奪戦の様相を呈してきた。

「ラオックスの株主と廣済堂の株主は重なり合う。廣済堂株の買い本尊は、ラオックスの親会社である蘇寧易購集団(大株主名簿ではグランダ・マジック・リミテッド)の、そのまた親会社、蘇寧電器集団ということになる。創業者の張近東会長が率いる大手家電量販店だ」(M&A業界に詳しいアナリスト)

 蘇寧電器集団は中国・深圳証券取引所に上場している。蘇寧がなぜ、廣済堂を手に入れようとしているのか。狙いは廣済堂の子会社で都内に6カ所の火葬場を運営する東京博善である。麻生も東京博善をターゲットにしているのだろうか。

 日本は火葬率100%だが、これは世界的にも珍しい。中国は土葬の風習が根強く残っているが、中国政府は土地の有効活用のために土葬を禁止し、火葬を推奨している。国策である以上、火葬が増えることは間違いない。中国で火葬場が大きなビジネスになるということだ。東京博善のノウハウを取り入れて、中国で火葬場チェーンを展開する。これが、蘇寧が廣済堂株式の争奪戦に参戦した真の狙いとみられている。

 蘇寧の意思を具現化する立場にあるラオックスの羅氏は、はたして都内最大の火葬場を運営する廣済堂を手に入れることができるのだろうか。新型肺炎拡大でラオックスの業績が急降下しており、「廣済堂どころではなくなった」(中国資本の動向に詳しいアナリスト)との指摘もある。ラオックスはどこへ向かおうとしているのだろうか。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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