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ドンキ、インバウンド消費蒸発で大打撃…グループはユニー買収が奏功、31期連続の増収か

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
MEGAドンキの店舗(撮影=編集部)
MEGAドンキの店舗(撮影=編集部)

 ディスカウントストア大手のドン・キホーテに暗雲が垂れ込めている。親会社のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(HD)の2020年1~3月期の連結営業利益は、前年同期比6.6%減の153億円だった。主力のドン・キホーテで売上高の約1割を占める訪日外国人客(インバウンド)消費が、新型コロナウイルスの影響で2月から急減した。20年6月期通期予想の下方修正も余儀なくされている。

 売上高は0.3%増の4069億円だった。総合スーパー大手のユニーが新型コロナの影響で国内の巣ごもり消費が増え堅調に推移した一方、ドンキがインバウンド消費の急減に加え、新型コロナの感染拡大に伴う外出自粛により客足が遠のいたほか、新生活需要が減るなどで低調に推移し、収益を圧迫した。ドンキの既存店売上高は、1月が前年同月比0.8%減、2月が1.2%増、3月が12.1%減だった。

 パンパシHDは5月8日、新型コロナによる消費減退を考慮し、20年6月期通期業績予想を下方修正した。売上高は従来予想から200億円引き下げ1兆6500億円(前期比24.2%増)、営業利益は10億円引き下げ710億円(同12.5%増)とした。

 ドンキは4月の既存店売上高(速報値)も不調で、10.2%減だった。客数が8.0%減、客単価が2.4%減と、それぞれ落ち込んでいる。免税売上高を除いた既存店売上高は0.3%減だった。外出自粛で客数が6.2%減と大幅に下がった一方、まとめ買いが増え、客単価は6.4%増と大きく伸びた。

 新型コロナの影響で衛生用品や食品など生活必需品が伸びたほか、在宅勤務の広がりでパソコン周辺機器が好調だった。また、自宅で過ごす人が増えたためか、化粧品や日焼け止めが伸び悩んだ一方、ダンベルやヨガマットなど室内スポーツ用品やジグソーパズルなど玩具が好調だった。

 新型コロナの影響で、当面は厳しい状況が続きそうだ。特に売上高の約1割を稼ぎだすインバウンド消費が蒸発したことは痛手だ。しばらく、売り上げはほとんど立たないだろう。特に都心店はインバウンド消費に大きく頼っており、かなり厳しい状況に陥りそうだ。なかには、インバウンド消費が過半を占める店舗もある。19年7~12月における免税売上高の割合が5割以上の店舗(開店後6カ月経過している店舗)は5店舗あり、「道頓堀北館」(大阪市)が82.6%、「道頓堀店」(同)が 68.3%、「道頓堀御堂筋店」(同)が62.5%、「国際通り店」(那覇市)が54.8%、「銀座本館」(東京都中央区)が54.7%となっている。これらの店舗はインバウンド消費に頼っていたため、深刻な状況に陥るだろう。

 なお、ドンキにおけるインバウンド消費の主役は中国人で、19年7~12月の国別の免税売上高の構成比は45.2%で最大だ。次に台湾(15.5%)が大きく、その次が韓国(8.6%)となる。もっとも、韓国の免税売上高の構成比は、日本政府による対韓輸出管理の厳格化などで日韓関係が悪化する前はもっと大きく、18年7月~19年6月だと中国(40.5%)に次いで大きい22.5%となっていた。商品別の免税売上高に関しては、19年7~12月における構成比は、日用雑貨品が51.2%と過半を占める。次いで時計・ファッション(19.9%)が大きく、その次に食品(19.5%)が続く。医薬品や化粧品、お菓子が免税売上高をけん引したという。

 インバウンド消費は当面厳しい状況が続くと見込まれる。そのため、店舗レイアウトや商品構成を切り替えるなど、営業体制を大幅に見直して運営する必要がありそうだ。

ユニーが好調で下支え

 一方、ユニーが堅調でドンキの落ち込みの一部を補っている。ユニーの既存店売上高は1月が0.8%増、2月が8.7%増、3月が1.8%増だった。巣ごもり消費が下支えし、堅調に推移した。ただ、4月は2.8%減と落ち込んでいる。外出自粛などの影響で巣ごもり消費が増え食品は6.7%増と好調だったものの、外出自粛に加え在宅勤務の広がりなどで春物衣料や入園・入学向け商品などが売れず、衣料品は49.2%減と大きく落ち込んだ。住関連商品は3.8%減だった。衛生商品や玩具などが好調の一方、化粧品や文具などが苦戦した。

 パンパシHD全体の既存店売上高は、3月が5.3%減、4月が5.5%減だった。インバウンド消費が蒸発したドンキの落ち込みが響いた。ただ、他の業種と比べれば、だいぶマシだ。4月は、外食は4割以上の減収が珍しくないし、百貨店は臨時休業が響き大手各社で7~9割の減収発表が相次いだ。これらに比べれば、パンパシHDの落ち込みは軽微といえるだろう。

 とはいえ、油断はできない。インバウンド消費は当面はあてにできず、ドンキは停滞が続くだろう。ユニーも新型コロナの影響で、今後は予断を許さない。ユニーの改革は途上にあり、足元のてこ入れでつまずけば、将来戦略も停滞しかねない。

 パンパシHDは、19年1月にコンビニエンスストア大手のファミリーマートが保有するユニーの全株式を取得して完全子会社化した。そして、ユニーが運営する総合スーパー「アピタ」「ピアゴ」をドンキ流の売り場づくりや品ぞろえなどを取り入れた新業態のディスカウント型総合スーパー「MEGAドン・キホーテUNY」や「ドン・キホーテUNY」に転換を進めていった。転換した店舗は、どこも好調だという。一方で、転換しないアピタとピアゴは、ドンキが得意とする、権限を各店に委譲する「個店主義」を推進する一方で、ドンキ流にこだわらない独自の世界観を構築する「New アピタ・ピアゴ構想」を始動させて、さらなる進化を目指している。だが、こうした改革が頓挫しかねない。

 パンパシHDは、19年6月期まで30期連続となる増収営業増益を達成している。今期はユニーの子会社化した効果で収益が大きく伸び、31期連続となる増収営業増益が見込まれている。業績は絶好調と言っていいだろう。だが、新型コロナの影響が長引けば、来期はどうなるかわからない。記録がストップすることもあり得る。油断はできない。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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