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レナウン消滅の危機、株価「4円」に…再建スポンサー企業探し難航、会社解体も現実味

文=編集部
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「レナウン HP」より

 民事再生手続き中のレナウン株が6月15日、東京証券取引所で最終売買を終えた。終値は4円。手続きを申請した5月15日の78円と比較すると95%(74円)安となった。

 レナウンは1963年に上場。ダーバンと経営統合する前の1989年には1610円の高値をつけた。上場来高値は2006年の2220円である。上場企業として57年の歴史に幕を閉じた。最終の株価4円を基準とした時価総額はおよそ4億円。リーマン・ショック前の500分の1にも満たない。

 5月、中国の親会社・山東如意科技集団からの資金回収が遅れる最中、新型コロナウイルスで売上が急減。資金繰りに行き詰った。負債総額は138億円。コロナ禍で経営破綻した初の上場企業となった。

 裁判所が選んだ管財人のもとで再建に向け、スポンサー企業を選定中で、複数の事業会社やファンドが名乗り上げた。6月末までに決定したい考えだったが、会社全体の引き受けを前提とするスポンサーの選びが難航している。

 営業の柱だった百貨店での販売の先行きが見通せず、破綻に伴うブランド価値の毀損も大きい。会社を一体的に引き受ける計画を示すスポンサーが出てくるかどうかは予断を許さない。ブランドの国内使用権や事業ごとの切り売りとなり、レナウンは“解体”を迫られる可能性がある。

 リストラを進め運転資金の確保に努めている。三井住友銀行から20億円の融資枠の設定を受けた。新たなスポンサーによる再建計画が認可されるまでの運転資金に充てる。

 応募の結果は非公表だが、全従業員の3分の1にあたる300人規模の人員削減は、募集締め切りまでに人数が集まらず延期した。グループ会社の紳士服製造子会社、ダーバン宮崎ソーイング(宮崎県日南市)が連鎖倒産し、従業員136人は7月5日付で解雇された。

黄金時代を築いた“中興の祖”尾上清

 レナウンは1902(明治35)年の創業。百貨店を主な販路とするアパレル企業だ。戦後のレナウンをつくり上げたカリスマ経営者は尾上清である。NHKの2016年下半期の朝ドラ『べっぴんさん』で高良健吾が演じた洋服メーカー、オライオンの社長のモデルになっている。

 NHK大阪放送局制作の朝ドラは関西企業の創業者をモデルにしたものが多い。『マッサン』はニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝とサントリー創業者の鳥井信治郎。『あさが来た』は大同生命創業者の広岡浅子。『まんぷく』は日清食品創業者の安藤百福。『わろてんか』は吉本興業創業者の吉本せいである。

『べっぴんさん』のモデルは子ども服メーカー、ファミリアの創業者・坂野惇子だ。惇子の父でレナウンの前身企業をつくった佐々木八十八(やそはち)の右腕として活躍したのが尾上清。幼馴染の尾上が坂野に創業を勧めた。尾上はレナウン“中興の祖”であり、ファミリアの恩人でもある。

 尾上の妻は伊勢丹の創業一族、小菅家出身で、伊勢丹の社員の間ではレナウンは“親戚企業”と受け止められていた。レナウンはファッションの伊勢丹を本拠地として黄金時代を築いた。1960~70年代には小林亜星によるCMソング『レナウン・ワンサカ娘』が大ヒットした。実写とアニメを合成したカラーCMの「イエイエ」は、アメリカンテレビCMフェスティバルで国際部門の繊維部門最優勝賞を受賞。グループ会社・ダーバンのCMに仏人気俳優のアラン・ドロンを起用するなど、話題の多い企業だった。86年には社会人アメリカンフットボールチーム、レナウンローバーズが日本一に輝いたこともある。

 日本で最初にワンポイントのロゴマークブランドのブームを巻き起こしたのもレナウンだ。人気ゴルファーのアーノルド・パーマーにあやかって、日本で独自に「アーノルド・パーマー」ブランドを開発。本人をCMに起用した。傘のマークを胸につけたポロシャツが一世を風靡。90年12月期に売上高2317億円を計上し、世界規模のアパレル企業に成長した。

主役の座はレナウンからオンワード樫山へ

 尾上が退任するとレナウンの勢いは衰える。決定的だったのはバブル崩壊。当時の伊勢丹社長で創業家4代目の小菅国安が不動産会社の秀和に伊勢丹株を買い占められた。

 93年、国安は責任を取り、社長を退任。当時のメインバンクの三菱銀行主導で決着がついた。以降、脱創業家が進む。小菅家の“親族企業”だったレナウンの地位は、当然、低下した。レナウンに代わって、伊勢丹の親密企業になったのがオンワード樫山だ。秀和に買い占められた伊勢丹株を引き取るにあたって、オンワードに100億円分を引き受けてもらった。

 アパレルのリーディングカンパニーの座はレナウンからオンワード樫山に交代した。

英アクアスキュータム社の買収失敗が転落の始まり

 以後、レナウンは、やることすべてがうまくいかなくなった。

 転換点は1990年の英国アクアスキュータムの買収だった。英国首相チャーチルが愛用した同国を代表する老舗ブランドだ。買収価格は200億円だが、再三、増資を引き受けて、結局400億円以上を投じた。

 三陽商会が英国バーバリのライセンス事業を成功させたことに刺激された。レナウンはアクアスキュータムを欧州での生産・販売の足がかりとする目論みだったが、アクアスキュータムの業績は冴えず、大失敗に終わった。買収の翌年の91年からレナウンは営業赤字に転落。バブル崩壊と重なり、リストラに次ぐリストラに明け暮れた。

 2010年、中国繊維大手の山東如意科技集団の傘下に入った。レナウンはアクアスキュータムを売却したが、回り回って17年、レナウンの親会社となった山東如意グループがアクアスキュータムを買収したため、国内の販売権は残った。

 19年には消費税増税、台風、記録的な暖冬の三重苦に見舞われた。さらにレナウンと原料取引があった山東如意の子会社への売掛金が回収できなくなった。これにコロナ禍が追い討ちをかけ、資金繰りに行き詰った。アクアスキュータムを買収してからは、“失われた30年”だった。

 店舗や通販サイトでは、5月以降、主力ブランドのダーバン、アクアスキュータム、カジュアル衣料アーノルドパーマータイムレスなどを5割引で販売する在庫処分を行った。

 ブランドを切り売りして、売り切れば、残った会社は清算される可能性が高い。レナウンという社名も消えてなくなるだろう。

(文=編集部/敬称略)

BusinessJournal編集部

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