
「日産系列メーカーの社長で、日産車に乗ってる人間なんていないですよ」
関東地区の日産自動車系列の部品メーカー社長は、日産車の商品競争力のなさにこう肩を落とす。日産は12日発表の2020年9月連結中間決算で、純損益が3299億円の赤字(前年同期は653億円の黒字)に転落した。中間決算での赤字は1999年以来21年ぶりで過去最悪の水準だ。新型コロナウイルス感染拡大が打撃を与えた格好だが、トヨタやホンダが第2四半期以降に回復基調を鮮明にしたことをみれば、大きく出遅れているといわざるを得ない。
先の部品メーカー社長は、冒頭の商品競争力のなさについてこう解説する。
「正直何を買ったらいいかわからないラインナップなんですよね。特に高級車なんですが、トヨタならレクサスというブランドがあるけど、日産の場合、そういうのが手薄。GTRに固執しているところがあるけど、いきなりそんなレーシングマシンみたいなものを欲しがるのはマニアだけ。新車のブランド別の売上上位を見ても、ほとんどがトヨタかホンダの車なのが消費者の本音を物語ってます」
日産は前会長のカルロス・ゴーン被告の時代に質より量の販売台数拡大路線に走り、新興国投資に走った。その結果、新車の研究開発が疎かになっていったというわけだ。
ゴーン被告が重視した販売台数拡大路線は、世界各国、特に北米での代理店の値引きの原資である販売奨励金を出すことで推進してきた。その結果、「日産車は安売り車」というイメージが定着し、ブランドイメージを著しく毀損した。ある大手証券アナリストはこのイメージの低さこそが、日産の低迷の本質的な原因だという。
「少し前までマツダも同じような安売り作戦を展開していた時期があり、新車購入時に大幅に値引きされ、そのぶん下取り査定額も下がり、他社より高く買い取ってくれるマツダのディーラーでしか売却ができず、結果としてマツダ車に乗り続けざるをえなくなるという『マツダ地獄』という現象が生まれました。今の日産はまさにそれ。マツダは『マツダ地獄』を脱するために、量より質の転換を図ってきましたが、それが最近実ってきて固定ファンの獲得につながっている。ここまで10年かかったわけで、方針転換して間もない日産も10年かかるのは否めない」