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リニア新幹線、計画崩壊の危機…開業遅延やルート変更→速度低下が必至か、揺らぐJR東海

文=編集部
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山梨リニア実験線で試験中のL0系(「wikipedia」より/Hisagi)

 JR東海は10月28日、2021年3月期の連結最終損益が1920億円の赤字(前期は3978億円の黒字)になりそうだと発表した。最終赤字は1987年の国鉄民営化後初めて。売上高は8630億円と前期比53.2%減。営業損益は1850億円の赤字(同6561億円の黒字)を見込む。

 連結売上高の68%(20年3月期)を東海道新幹線の運賃収入が占める。新型コロナウイルスの感染拡大で東海道新幹線の利用客は4、5月に前年同月比9割減と激減。9月は同62%減、10月も27日まで同56%減だった。新幹線の運賃収入は前年比6割減の水準で推移しており、来年3月にかけて4割減にまで回復するとみているが、コロナ前の水準に戻るには時間がかかりそうだ。

 新型コロナの売り上げへの影響は6170億円程度と試算した。JR東海単体で5270億円程度と大半を占める。ジェイアール名古屋タカシマヤなど流通業が630億円程度。ほかに駅ビルやホテルなどにも影響は及ぶ。

 20年9月中間決算の売上高は前年同期比64.6%減の3378億円、最終損益は1135億円の赤字(前年同期は2575億円の黒字)。中間期の赤字も初めてのことだ。

 不要不急の車両の修繕や開発案件などは先送りする。5~10月に実施している役員報酬の10%削減を21年1月まで延長する。コスト削減と設備投資の抑制で680億円を浮かせる。金子慎社長「来年度(22年3月期)は黒字に」と強調する。

リニア中央新幹線の開業は延期

 6月23日に開催した株主総会で役員を大幅に刷新した。1987年のJR発足時からの役員で、リニア中央新幹線の推進役だった葛西敬之名誉会長が取締役から外れた。山田佳臣相談役や04年から社外取締役を務めてきた張富士夫・元トヨタ自動車名誉会長らが退いた。

 金子慎社長は続投した。旧国鉄組がリタイアし、JR入社組が常勤役員(執行役員を含む)の8割近くに達した。新しい経営陣は東海道新幹線の持続的成長とリニア中央新幹線の開業という2つの課題に取り組んでいる。コロナで観光需要が吹き飛び、新幹線一本足打法のビジネスモデルが崩れたことがJR東海の苦戦の原因だ。

 これにリニア中央新幹線の開業延期が追い打ちをかけた。27年、東京(品川)―名古屋間で開業し、37年に大阪に延伸する計画だった。6月26日、JR東海の金子社長と静岡県の川勝平太知事のトップ会談が行われたが決着がつかず、27年開業の延期が事実上決まった。37年の大阪延伸も無理だと取り沙汰される。川勝知事はおよそ60万人が利用する大井川の水量がリニア新幹線のトンネル工事で減るおそれがあるとして、県内の工事許可を出していない。

 リニア開業に向け、JR東海には、どのような打開策があるのだろうか。

「ルートを変更するしかないのではないのか。ルートを変更するとスピードが落ち、時間が余計かかると、JR東海は反対しているが、それはJRの都合」(自民党運輸族)。

「国土交通省の鉄道局は静観の構えだ。JR東海がトップのパイプばかり意識して鉄道局の言うことを聞かないから、『(JR東海だけでやれるなら)勝手にやって』という姿勢だ」(全国紙の国交省担当記者)

「葛西敬之名誉会長と安倍晋三首相(当時)の共同プロジェクト」と陰口を叩かれたリニア中央新幹線は、安倍首相の病気退陣もあって大きな転機を迎えた。

(文=編集部)

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