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ラーメン店の倒産急増で過去最多を更新か…六角家本店が破産、幸楽苑は店舗大量閉鎖

構成=長井雄一朗/ライター
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六角家本店(「Wikipedia」より)

 ラーメン店倒産増加が止まらない。帝国データバンクの調査によると、2020年1~9月に発生したラーメン店の倒産は34件となった。このまま推移すれば過去最多の19年(36件)を上回ることが確実で、過去20年で最多を更新する見込みだ。

 中には、豚骨ラーメンの「長浜将軍」や横浜家系ラーメンの老舗「六角家本店」などの人気店も含まれており、ラーメンファンを悲しませている。全国に約1万8000店あるというラーメン店の競争激化が鮮明となっているが、その背景には何があるのか。帝国データバンクデータソリューション企画部情報統括課副主任の飯島大介氏に聞いた。

低価格競争から抜け出せないラーメン店

――ラーメン店の苦境が続いていますね。

飯島大介氏(以下、飯島) 倒産理由の多くを占めるのが「競合店との競争激化」です。経済産業省の16年の調査によると、全国のラーメン店の数は約1万8000店。そのうち約半数が個人店で、店舗数は12年から約1000店増加しました。もともと、ラーメン店は他業態と比べて新規参入のハードルが低いこともあり、同一商圏での店舗の乱立や他の飲食店との競争などで、レッドオーシャン化が進みやすい業態です。

 そのため、リピーターを獲得するために割引クーポンを発行したり、低価格戦略を取らざるを得なかったりして、消耗戦を余儀なくされるケースが多い。その結果、原材料費や人件費、家賃などの固定費に苦しめられやすいという事業構造になっているのです。

――人気店の倒産は大きな話題となりました。

飯島 「長浜将軍」(福岡)や「六角家本店」(神奈川)は根強いファンを抱えていたにもかかわらず、倒産に至りました。福岡県内に4店舗を展開していた「長浜将軍」はネットで「長浜将軍生ラーメン」「博多一口餃子」などを販売し、02年8月期には売上高約3億6000万円を計上していました。

 しかし、他社との競争激化などで集客が落ち込み、19年8月期の売上高は約2億1900万円にダウン。地理的に韓国や中国からのインバウンド重要も多かったようですが、新型コロナの影響で売り上げが急激に落ち込み、事業継続の目処も立たないことから自己破産となりました。

――「六角家本店」はセブン-イレブンとのコラボ商品も展開していたため、意外でした。

飯島 かつては“家系御三家”の一角といわれた「六角家本店」は、新横浜ラーメン博物館への出店やカップ麺の発売で知名度を上げました。横浜家系ラーメンを全国区にした立役者であり、ブームの火付け役ともいえる存在でしょう。しかし、代表者の体調不良もあって17年10月末には閉店しており、破産に至りました。

――老舗や有名店でも厳しい経営環境が続いているということですね。

飯島 背景には、他業態に比べて値上げが難しく、差別化の要素が少ないという事情があります。総務省の調査によると、ラーメン(中華そば)1杯当たりの価格は20年8月時点で523円。10年前の約550円から27円ほど値下がりしています。現在、ボリュームゾーンは600~800円といわれており、よほどの付加価値がないと、消費者はそれ以上の価格では店に足を運んでくれないということです。

 一方、他の外食産業は収益改善のために客単価をアップする戦略を取っており、回転ずしやハンバーガー、牛丼などの業態では10年前と比べて価格が上昇しています。いわば、ラーメン店は低価格競争から抜け出せていない状況であり、大手も苦心しています。

幸楽苑やJBイレブンは不採算店舗を閉鎖へ

――大手の動向について教えてください。

飯島 幸楽苑は看板商品だった290円の「中華そば」の販売を15年に終了して、高付加価値路線に舵を切りました。それにより、客単価は上昇したものの、一時的に客数が低下しました。日高屋も18年4月に中華そばを値上げしましたが、既存店の客数が前年実績を下回る月が多いなど、苦しい状態が続いています。

 また、そうした経営環境を背景に、不採算店舗の閉鎖を進める動きも加速しています。幸楽苑は1月に不採算店舗など51店舗の閉店を発表、コロナ禍の影響もあり、最終的に20年度4~6月期は前年同期比で77店が減少しました。JBイレブンも、運営する一刻魁堂などで不採算6店舗の閉店を発表しています。

 富士経済の推計によると、20年の外食市場は昨年比で8割程度の水準(約28兆円)まで縮小します。ラーメン店は低価格業態のファストフードをはじめ、ウーバーイーツなどの宅配需要やテイクアウト市場との競争も激化していくことが予想されます。そのため、今後は味や価格以外に、出店におけるマーケティングなどの緻密な戦略が、生き残るための重要なファクターになるでしょう。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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