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JTB、経営危機…赤字1千億円、6千人削減 GoToで「旅行はネット予約」が常識に

文=編集部
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JTB本社のある天王洲アイル・シーフォートスクエア(「Wikipedia」より/Kentin)

 JTBは11月20日、店舗の25%の閉鎖やグループ人員6500人の削減などを盛り込んだ事業構造改革を発表した。2021年度までに経費を中心にコストを約1400億円改善する。国内の店舗を統廃合などで115店舗削減する。国内のグループ会社は統合や売却などで10社以上削減するほか、海外のグループ会社でも190拠点以上減らす。

 現在2万9000人いるグループ人員を2万2500人まで減らす。22年度の新規採用も見合わせることを加味して、国内で2800人、海外で3700人を削減するとしている。役員報酬や賞与も減らす。

 JTBの20年4~9月期連結決算は売上高が前年同期比81.1%減の1298億円、営業利益は710億円の赤字(前年同期は64億円の黒字)、最終損益も781億円の赤字(同43億円の黒字)だった。

 旅行業界は予約サイトを使った宿泊が急速に増え、JTBはネット化の立ち遅れで顧客を奪われていた。新型コロナウイルスの感染拡大による需要の激減が追い打ちをかけた。国内旅行は強みを持つ団体・法人向けの需要が蒸発。出入国制限や渡航制限などの措置によりインバウンドや海外旅行も大きく落ち込んだ。国内旅行の売上高は前年同期の2656億円から399億円へと85.0%減。海外旅行は2384億円から219億円へ90.8%減と壊滅状態だ。

 訪日旅行(インバウンド)は376億円から28億円と92.6%減。グローバル旅行(日本以外の第三国間の旅行)は529億円から109億円へ79.4%減った。この傾向は当面続く見通し。21年3月期の経常損益は1000億円の赤字(前期は25億円の黒字)を見込む。連結決算に切り替えた00年以降で最大の赤字額となる。売上高、営業損益、最終損益の予想は開示していない。

Go Toトラベルの恩恵はオンライン旅行会社に集中 

 JTBにとって政府が旅行代金を補助するGo Toトラベルは、需要を取り込む、またとないチャンスだった。最大の旅行客を抱える東京が政府の支援対象になり、楽天が運営する楽天トラベル、リクルートライフスタイルのじゃらんnet、ヤフーのYahoo!トラベル、一休の一休ドットコムなど、使い勝手がよく若者に人気のオンライン旅行会社(OTA)の予約サイトが、膨らんだ需要の多くを取り込んだ。新型コロナの流行が続き、旅行予約は法人や団体ではなく個人が中心となった。個人を得意とする旅行予約サイトに利用が集中したのは当然の成り行きだった。

 Go Toは新型コロナ以前から顕著になってきたオンラインへの傾斜をさらに加速させた、との指摘がある。財団法人日本交通公社の調査では、18年時点で国内の宿泊旅行の予約によく使う方法(複数回答)は「ネット専門の旅行予約サイト」が46.4%と最も高く、「旅行会社のウェブサイト」(29.6%)、「旅行会社の店舗」(27.8%)を圧倒した。

 日本観光振興協会などの19年の調査によると、観光関連サイトの年間閲覧数(スマホ向け)はトップがじゃらんnet。2位が楽天トラベル。JTBは10位にとどまり、閲覧数でトップと2倍以上の差がついた。

 Go Toはオンライン旅行会社への流れを鮮明にした。JTBの実店舗での接客では、Go Toの追い風を生かせなかった。JTBは全国に張り巡らせた店舗網で国内の旅行業界を牽引してきたが、コロナ禍によって、旧来型の店舗モデルの転換を迫られたことになった。

Go To事務局の出向社員には日当4万円を支給

 Go Toトラベルの総事業費は1兆1248億円。国内旅行をした場合、宿泊費や交通費など旅行代金の50%分を国が補助する仕組みだ。補助の内訳は7割が旅行代金の割引、3割は旅行先での買い物や飲食に使えるクーポン券を配る。

 総額20万円の旅行の場合、7万円の割引となり、さらに3万円のクーポン券ももらえる。コロナ禍で瀕死の状態に陥った観光業界を救うのがGo To事業の趣旨である。国の委託を受けて事務局を構成しているのはツーリズム産業共同提案体。日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)など業界団体に加え、JTB、近畿日本ツーリストの持株会社・KNT-CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズの大手旅行代理店4社が人員を出した。

 4社から各都道府県の事務局に社員が出向している。東京の事務局では435人の出向者のうち約4割、174人がJTBの社員。「週刊文春」(文藝春秋)の報道によれば、出向社員には高額な日当が支払われていた。平均日当は4万円。月に25日に働けば100万円となる。日当の原資は事業費である。

 出向者は会社から給料をもらっているわけだから、日当はまるまる会社の収入になる。高額日当というかたちで資金が注ぎ込まれたわけで、「JTB優遇策」との批判が渦巻いていた。事務局に入っている大手はGo Toがどんな仕組みになるかを先行して知ることができる。システムの構築を手はじめに準備万端を整えてGo Toに取り組めた。他方、中小は発表があって初めて内容を知るしか手立てがなかった。

山北社長は経営責任を取らず

 Go Toトラベルは事務局の中心に座るJTBの圧勝とみられていた。ところが、蓋を開けてみたら、個人客が殺到したのは、じゃらんnetや楽天トラベルなど、ネット専門の旅行予約サイトだった。事務局を事実上握って、もっともメリットが大きいとみられていたJTBへの利益の貢献は小さかった。

 その結果が店舗と人員の削減。営業でもデジタル化を急ぐ。ネット販売に適した商品を拡大し、予約サイトなどで価格比較になじんだネット利用者を取り込む。JTBは財団法人日本交通公社の営業部門が分割、民営化され、日本交通公社として発足した企業。JTBに社名変更。女性の就職人気ランキングでトップになったことで知られるが、株式を公開していない。

 人員削減について山北栄二郎社長は「人材は会社の財産なので断腸の思いだ。来期は確実に黒字化する」と述べている。業績回復の起爆剤となるはずだったGo Toトラベルで新規のニーズを取り逃がし、大リストラの実施に追い込まれたにもかかわらず、「上場していないことをいいことに山北社長が経営責任を取ろうとしない」(関係者)。

 上場会社であれば株価は下落し、経営責任を問う声が起こったことだろう。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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