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「赤字151億円」JTBのかなり深刻な内情…旅行代理店、もはや“売るものがない”状態か

文=松嶋千春/清談社
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JTB本社(「Wikipedia」より/Kentin)

 2019年4月より、大手旅行代理店JTBの一部店舗で「旅行相談料」が試験的に導入された。国内旅行の相談は30分2160円(以降30分ごとに同額)、海外旅行の相談は30分5400円(同3240円)の料金を請求するという。

 実は、こうした相談料は以前から規定されていたものだというが、なぜこのタイミングで厳密な運用に踏み切ったのか。大手旅行代理店で長年の勤務経験があるA氏に、旅行業界で何が起きているのかを聞いた。

相談料徴収は“冷やかし客対策”?

 5月25日に発表されたJTBの19年3月期連結決算では、純損益が過去最大の151億円の赤字となったことが明らかになった。ウェブチケッティングの普及で旅行代理店の存在意義さえ問われ始めているなか、旅行相談料の徴収は業界の断末魔なのだろうか。

「旅行代理店の店舗って、誰でも入れるんですよね。明らかにお金を持っていなさそうな身なりの方が『世界一周ツアーに行きたいんだけど』とカウンターにやって来て、いろいろ話し込むんですよ。しかし、『やっぱり払えません』と帰ってしまい、『この時間っていったいなんだったんだろう?』みたいなケースが多いんです。今回の相談料の請求はサービスの対価をいただくということですが、冷やかし対策の側面もあるでしょうね」(A氏)

 もはや、旅行代理店にはそんな“見込み客”に時間を取られている余裕はないようだ。その背景には、競合のウェブ上の代理店の台頭だけでなく、各社からの「マージン(手数料)の圧縮」に苦しめられている事情があるという。

「バス会社、鉄道会社、航空会社などからもらうマージンは年々、縮小傾向にあります。特に、ツアーではなく交通チケット単品で売った場合、交通会社からのマージンを除いた利益は数百円という世界です。そんな微々たる利益のために数十分でもリソースを割かねばならないというのは、効率を考えると非常に厳しいですね」(同)

旅行代理店は「売るものがない」事態に

 ネットで簡単に旅行情報を得られ、個人予約が当たり前になった昨今、旅行代理店ならではの「情報のアドバンテージ」も薄れているという。

「昔は、旅行会社だけが握っていた情報がたくさんありました。たとえば、航空券は業界関係者だけが相場価格を知ることができたため、そこに好きなように利益を上乗せして売ることができた。今は誰もが情報に簡単にアクセスできるため、ちょっと上乗せするだけで『高い』とバレてしまうので、平均約10%という低い利益率で耐えている状況ですね。そんななか、情報は店舗で仕入れ予約はネットで……という合わせ技を使うお客さんもいらっしゃいます。接客している側にとっては、一番むなしい瞬間だと思いますよ」(同)

「ネット予約なら大手だってやってるじゃないか」。そんな声が聞こえてきそうだが、厳しい状況は店舗もネットも変わらないそうだ。交通機関も各宿泊施設も自社ホームページでの予約比率が高くなってきており、代理店は「売るものがない」という事態になってきている。

「グーグルでも『地域名+ホテル』で簡単に各予約サイトの宿泊料金が比較できてしまうので、だんだん競合のような立ち位置になりつつあります。グーグルに本気を出されたら、多くの旅行予約サイトが潰れるかもしれません」(同)

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