一方、インターネット上では、その性能に疑問を投げかける声が多く上がっている。その主な批判をまとめてみると、「ダニを減らせない」「目に見えないホコリは吸っているというが、目に見える髪の毛等のごみを吸わない」「うるさい」「重い」「吸引力が弱い」といったものである。
筆者も、レイコップを購入したが、確かに吸引力は弱い。吸引力の強さを示す指標である吸引仕事率がレイコップは65W(ワット)で、コードレスのハンディクリーナーと大差ない。つまり、強い力で布団の中からハウスダストなどを吸い上げる仕組みではないことがわかる。
レイコップを製造・販売するレイコップ・ジャパンのホームページを見ると、吸引力が強すぎると布団を吸いつけすぎるため、最適な強さが65 Wであり、布団を押さえるために適当な重量も計算の上の構造のようだ。つまり、吸引力、重さなどを総合的に勘案し、ハウスダストの除去効率を最大化しているということだろう。
レイコップが爆発的に売れるきっかけとなったのは、あるテレビ番組で家電に詳しいお笑いタレントが紹介したことだといわれているが、その際「ダニも死滅させて除去できる」と言っていた。それがネット上での批判を招く一因となっているのだ。
レイコップはダニを減らせるのか?
そこで、実際にレイコップ・ジャパンお客様サポートセンターに問い合わせてみた。
–レイコップでダニを減らすことはできるのですか?
担当者 そもそもレイコップはハウスダストを除去するための製品で、ダニの除去を目的としていません。ハウスダストを吸引する際に、微小なダニがハウスダストに付いてくることはありますが、ダニだけを吸引することはできません。
–ダニを死滅させることはできないのですか?
担当者 ダニを死滅させる性能はありませんが、ダニの死骸やフンをハウスダストと共に減らすことはできます。
—UV(紫外線)光を発する装置が付いていますが、ダニを殺す目的ではないのですね?
担当者 はい。ただUVには殺菌効果があるといわれております。
–ハウスダストと共に微小なダニが取れるということですが、どの程度ダニが取れるかといったデータはないのですか?
担当者 あくまでレイコップはハウスダストの除去を目的としているので、ダニの除去率についてのデータはありません。
–ありがとうございました。
つまりレイコップは、そもそもハウスダスト除去にのみ焦点を当てた製品で、テレビで紹介したタレントの勘違いであったというわけだ。それを信じ、ダニの除去を期待して購入した人にしてみれば、騙された思いだろう。
ダニは極めて生命力が強く、簡単には死なない。高濃度の洗剤で布団を洗っても、まったく減らない。天日に干しても、表面にいるダニは弱ったり一部死滅するが、布団の中にいるダニは死なない。死滅させるには、摂氏50度以上の温度を30分以上維持しなければならないという。つまり、コインランドリーなどで大型の乾燥機に入れなければ、ダニを死滅させることは不可能に近い。
ハウスダストについては、レイコップはある程度除去できることが実証されているので、ダニの除去は期待せず、ハウスダストの除去のためと割り切って使用するといいだろう。
ところで、掃除機メーカー大手の英ダイソンが、5月に発売した布団用掃除機の広告が、「UVや振動は意味がない」「ハウスダスト除去には強力な吸引力が必要」など、まるでレイコップに挑戦状を叩きつけるかのような内容で、そのキャッチコピーは、「最も多くのハウスダストを取り除く布団クリーナー」だ。
YouTube上にも、レイコップとダイソンの性能比較をした動画が多数上がっている。そのほとんどは、ダイソンのほうが強力な吸引力によって布団の中のハウスダストを除去できるという結果を示している。
布団専用掃除機の先駆者であるレイコップがどのように反撃するのか、楽しみだ。
(文=沼田利明/マーケティングコンサルタント)