
2021年になっても猛威を振るい続ける新型コロナウイルス。東京都の新規感染者は毎日のように1000人を超え、いまだ収束のメドが立たないが、中でも苦境に立たされているのが飲食店だ。1月8日に緊急事態宣言が再発令され、飲食店には20時以降の営業自粛が要請されている。
業態を変えて何とか苦境をしのごうという店も多い中、東京・練馬の焼肉店「まつとよ苑」では、少し変わったサービスを始めた。
1月8日に「緊急事態宣言期間は2月7日まで休業することになりました」とツイッターに投稿し、翌9日には生肉のテイクアウト、通販のサービスを開始すると発表、「ご興味ありましたら是非DM頂けましたら幸いです」と投稿した。
常連客から“楽しみ”というリプライが多く出る中、かねてからこのお店が気になっていた筆者が興味本位でDMを送ってみると、驚くような返事が届いた。それは……
「お肉を無料でお送りさせていただきたいと考えています」

常連客ならまだしも、会ったこともない見ず知らずの人間に店の自慢の肉を無料で送る――このサービスに驚いた筆者は急遽、まつとよ苑に取材を依頼。仰天サービスの理由と、コロナ禍の現状についてうかがった。
「貴ちゃんねるず」出演で大反響
「まつとよ苑」と聞いて、ピンと来た方もいるだろう。というのも、このお店はとんねるず・石橋貴明氏のYouTubeチャンネル「貴ちゃんねるず」の登録者なら知らない人はいないほどの超有名店なのだ。
改めて説明すると、まつとよ苑は、石橋貴明氏が都内の飲食店にアポなしで来店して味をジャッジする、「貴ちゃんねるず」内の人気企画「東京アラートラン」に出演した。そして、味にうるさい石橋貴明氏を唸らせたメニューの数々と個性的なスタッフの姿が印象的な動画は、再生回数約260万回(1月26日現在)を記録する“神回”となった。

そんなまつとよ苑を訪ねてみると……「貴ちゃんねるず」出演時と同様に、店主のタイチさんがにこやかに対応してくれた。
「2月21日でオープンしてちょうど1年ですが……いきなりコロナで、緊急事態宣言でしたからね。すぐ閉めちゃってたんですよ」と当時を振り返るタイチさん。
前職は不動産関係の仕事をしていたが、祖母自慢の自家製ダレを食べてほしいという思いで、一念発起して焼肉店を開業した。地元・兵庫に懇意の精肉業者がいるため、上質の牛肉を安価で提供できるのが強みだ。それだけに手ごたえを感じていたが、思わぬ波乱の船出となった。
そんな苦境を救ったのが「貴ちゃんねるず」だ。もともととんねるずのファンだったこともあり、出演希望の応募をしたところ、見事に採用。タイチさんは「宝くじが当たったような感じでした」と語っていたが、効果はそれ以上だった。動画が公開されると、瞬く間に評判が広がり、当日(8月13日)からは予約しないと入れないほどの大盛況となった。

また、来店客が店の様子をSNSに投稿したことで、口コミが客を呼び、その知名度は全国レベルに。遠方からやってくる客も多く、中には福岡県からひとりで訪れる女性の常連客まで生まれた。