
帝国ホテルは旗艦の帝国ホテル東京を建て替える。筆頭株主(保有比率33.20%)の三井不動産などと周辺の再開発に乗り出す。総事業費は2000~2500億円を見込んでいる。地上17階で約570室を持つ本館と31階建ての複合ビルであるタワー館を順次、建て替える。再開発の面積は約2万3000平方メートル。本館は2031年度に着手し、36年度の完成が目標。タワー館は24年度にスタートし30年度に竣工の予定だ。
タワー館を解体後、土地の共有持ち分の一部を三井不動産に譲渡し、その後、共同で新タワー館を新設する。譲渡価格は未定。本館を再開発中は先に完成したタワー館や近隣施設を使い、ホテルの営業を続ける方針だ。帝国ホテルは1890年の開業。2020年11月3日に開業130年を迎えた。その間、日本の迎賓館の役割を継続すべく数度の建て替えを行ってきたが、3代目の建物である本館は竣工から50年、83年開業のタワー館は竣工から38年が経過している。
三井不動産は2007年、帝国ホテル株式を861億円で取得した。売り主は米サーベラス・キャピタル・マネージメント傘下の国際興業。田中角栄元首相の刎頚の友といわれた国際興業社主の小佐野賢治氏が帝国ホテルのオーナーに就いていた。小佐野氏の死後、国際興業の経営が悪化し、サーベラスが国際興業を買収。再建の一環として帝国ホテル株を売却した。
帝国ホテルは三井不動産に資本参加を仰ぐ際に基本協定書を締結。三井不動産は帝国ホテル東京がある日比谷エリアの再開発計画を「両社で検討する」と表明していた。内幸町一丁目街区の再開発について関係権利者10社は3月25日、まちづくりの基本方針で合意した。関係権利者はNTT都市開発、公共建物、第一生命保険、帝国ホテル、東京センチュリー、東京電力パワーグリッド、日本電信電話、日本土地建物、東日本電信電話、三井不動産の10社である。
日比谷・内幸町エリアは11年、「日比谷エリアまちづくり基本構想」が策定され、内幸町一丁目街区は19年に国家戦略特別区域会議において東京都の都市再生プロジェクトと位置付けられた。関係権利者10社は日本有数の都市公園である日比谷公園に隣接する場所であることを踏まえ、まちづくりの方針を策定した。約6万5000平方メートルの街区を3つに分け、オフィスや商業施設、ホテルが入った40階以上の複合ビルができる見込みだ。全体の完成は37年度以降を予定している。
帝国ホテルの21年3月期の最終損益は148億円の赤字
帝国ホテル東京の建て替え計画の実施が決定したことから、帝国ホテルはこれまで「未定」としてきた21年3月期の連結業績予想を明らかにした。最終損益は148億円の赤字(20年同期は24億円の黒字)に転落する。建て替え実施に伴う建て替え関連損失として20億円を特別損失として計上する。帝国ホテル大阪の固定資産の減損損失10億円も計上する。