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大丸、百貨店の常識「消化仕入れ」依存を脱却…テナント比率65%の“パルコ化”に活路

文=編集部
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大丸心斎橋店本館(「Wikipedia」より)

 J・フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は、3月中旬から高級ブランドの婦人服のサブスクリプション(定額課金)サービスを始めた。月額1万1880円(税込)で海外ブランドなどを毎月3着まで着ることができる。小売り大手によるサブスクは初めてだ。

 まず国内外の50ブランドが参加。イタリアファッションブランドの「マルニ」、フランスのパリジェンヌの気分が味わえる「シーバイクロエ」など海外有力ブランドのほか、三陽商会の「エポカ」、TSIホールディングスの「アドーア」など百貨店向けの高価格帯のブランドが中心になる。9割以上のブランドがサブスクで取り扱われるのは国内初。大丸松坂屋が取引先から買い取り、サブスク用とする。

 利用者は専用サイトで自分好みのジャケットやブラウスなどを3着まで選び、自宅などに届けてもらう。サイズ違いに対応するため、1回の注文で1アイテムまで交換が可能。気に入った商品は会員価格で購入できる。送料、クリーニング料、補修費用は月額料金に含まれている。休会、退会も自由にできる。

 5年後に会員数3万人、売上高で年55億~60億円を目指す。大丸松坂屋が事業主体となり、配送(日立物流)、クリーニング(バレル、洗濯ブラザーズ)、リサイクル(日本環境設計)とパートナーシップを組んで実施する。

 サブスクは、動画配信の米ネットフリックスなど世界大手が日本でも利用者を増やしている。衣料品では新興勢力のエアークローゼット(東京・港区)やアパレル大手のストライプインターナショナル(岡山市)がサブスクを手がけている。ただ、高価格帯のブランドの取り扱いは多くなく、本格的な普及には至っていない。

 コロナ禍で来店客が減るなか、大丸松坂屋はモノの所有ではなく利用を促すことで稼ぐビジネスモデルの構築を模索している。ネットで注文する点も従来の百貨店ビジネスと一線を画す。J・フロントは百貨店業界のサブスクの先駆者になれるのか。

インバウンド消費の象徴「ギンザシックス」が苦戦

 J・フロントは、どこよりも早く脱百貨店に経営の舵を切った。2017年4月、松坂屋銀座店跡地に開業した「ギンザシックス」は、東京・銀座のインバウンドを象徴する都心型商業施設と評された。しかし、新型コロナウイルスによるインバウンド消費の消失で苦戦に陥った。

 今年、開業4周年を迎え、初めての大規模なリニューアルを実施した。20年12月、飲食店、アパレルショップ、化粧品など40店が一斉に退店した。代わって40店が順次出店。高級ブランド「グッチ」のジュエリー・時計の店が出た。フランスの靴ブランド「クレジュリー」などは日本初進出だ。食品ではイオン傘下の有機食品専門店「ビオセボン」が出店した。

 ギンザシックスは銀座の顔として鳴り物入りでオープンした。大理石や高級カーペットを使い、話題づくりに一役買ったが、逆に顧客が店内に入りにくい一因にもなった。観光施設として集客力は抜群だったが、商品を購入している顧客は相対的に多くはなかった。「高級ブランドばかり並んでいるので、なかなか買う気になれない」という声は、開業当初からあった。それでも、開業人気で1年目の売り上げ目標はなんとかクリアした。

 インバウンドに依存していることが、当初から懸念材料として指摘されていた。ギンザシックスの免税売上比率は30%と高かったが、外国人の消費は移ろいやすい。開業効果が薄れ、外国人客が思うように集客できなかったらどうなるのか。高い家賃を払っているテナントの動向が気になった。

 新型コロナで、この心配が現実のものとなった。インバウンドは蒸発。大量のテナントが撤退した。J・フロントの脱百貨店のビジネスモデルは、「コロナの一撃でもろくも崩れ去った。脱百貨店の成果を誇示するギンザシックスは“インバウンドバブル”の象徴となった」(関係者)。

 J・フロントの好本達也社長の使命は脱・百貨店路線の総仕上げである。大丸心斎橋店(大阪市)は大丸最大の旗艦店で、再開発に5年の歳月をかけた。J・フロントが追及してきたのは「百貨店の未来」像だ。500億円を投じ、本館を建て替え、北館にパルコを誘致した。そして、これまでの百貨店業界の常識だった「消化仕入れ」と呼ばれる仕入れ方法を見直した。

 消化仕入れの売り場では、店頭の商品は取引先の在庫である。商品が売れた時点で百貨店が仕入れたことになる。売れ残っても百貨店には損失が出ない。だから、百貨店は「場所貸し業」といわれてきた。

 19年秋に建て替えた大丸心斎橋店本館は消化仕入れの売り場を大幅に圧縮。旗艦店としては異例のテナント比率65%を達成した。消化仕入れのモデルから、テナントからの家賃収入に依存する不動産モデルに思い切ってシフトした。好本社長が次なるターゲットとして見据えているのは、松坂屋の発祥の地にある、グループ最大の旗艦店、松坂屋名古屋店(名古屋市)だろう。グループの国内百貨店は16店あるが、今後はテナント比率を急拡大し、いわゆる“パルコ化”が検討されることになる。

 脱百貨店の具体策がギンザシックスとパルコ化だったが、コロナが、このビジネスモデルを粉砕した。

21年2月期の業績予想を下方修正

 1月以降の緊急事態宣言の再発出の影響で売り上げが減少したことから、J・フロントは21年2月期の最終損益(国際会計基準)を260億円の赤字(20年同期は212億円の黒字)と、従来予想から74億円下方修正した。

 昨年9月段階で260億円の最終赤字としていた業績予想を、いったんは引き上げた。客足の回復やコスト削減が背景にあった。だが、コロナの第3波の到来で百貨店の客数は12月が前年同月より4割減り、1月も5割減と低空飛行が続く。

 総売上高は従来予想より444億円引き下げ8104億円(前期比28%減)を見込む。年商1兆円の大台を大きく割り込むことになる。賃貸収入も大きく減少し、この結果、売上高にあたる売上収益は前期比34%減の3190億円と従来予想を185億円下回ることになる。

 2月には傘下の商業ビル・パルコで津田沼店(千葉県船橋市)と新所沢店(埼玉県所沢市)の閉店を決めた。店舗閉鎖関連費用(約44億円)のほか減損損失を計上する。パルコの事業環境の悪化を受け、繰り延べ税金資産を取り崩し60億円の税金費用を計上する。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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