第一生命、モラル崩壊…全国で営業職員が顧客から金銭詐取、被害総額「20億円」の画像1
第一生命本社(「Wikipedia」より)

 第一生命保険の元女性社員(89)が在職中に顧客24人から19億5100万円をだまし取った事件で、顧客のうち3人が同社に被害弁済などを求めていた調停が、4月9日までに東京地裁で成立した。弁護団によると、同社が解決金として被害額(未払い分)に当たる計1億9200万円を支払う。

 第一生命は3月末、被害者に対して被害額を全額補償すると発表した。当初は「被害額の3割を立て替える形で弁済する」としたうえで、被害者と個別に補償を協議してきた。被害額は被害者が支払った総額から元社員が返済した額や第一生命が立て替えて弁済した額など、はっきりしている分を差し引き、被害額が確定している案件を対象にする。

 第一生命は2020年10月、西日本マーケット統括部徳山分室(山口県周南市)に勤務していた「特別調査役」が、客に架空の金融取引を持ちかけ、不正に資金を集めていたと公表。同社は特別調査役を7月3日に懲戒解雇し、山口県警周南署に詐欺容疑で刑事告発していた。金融庁は保険業法に基づく報告徴求命令を出した。

 第一生命の金融詐取事件は山口県にとどまらない。和歌山県では50代の元営業職員による金銭詐取が発覚。24人の5992万円の保険を無断で解約した後、契約を元に戻す名目で、偽造した領収書を渡し、全額だまし取っていた。

 福岡県では30代の元営業職員が3人の顧客から865万円、神奈川県の60代の元営業職員は4人の顧客から503万円を詐取していたことも明らかになった。福岡のケースでは「金銭的な優遇制度がある」と持ちかけ、神奈川では契約者の遺族に架空の貸付金の返金を求めていた。事務部門でも50代の元職員が5人の顧客から5230万円を詐取していた。山口県の事案と合わせると被害者は60人、被害総額は20億7690万円に達した。

 第一生命保険の稲垣精二社長は20年12月22日、記者会見し謝罪した。山口の事件が10月に表面化して以降、社長が公式の席上、謝罪するのは初めてだった。詐取が起きた原因として「社員と顧客間の現金授受を禁止していなかった」ことを挙げた。89歳の元女性社員が「特別調査役」という地位にあったため、社内の関係部署に「穏便に収めたい」「あまり関わりたくない」との意識があったとも指摘した。

 第一生命は成績優秀者に付与する「上席特別参与」などの名称を廃止する。役員11人が報酬を3カ月間一部返上する。稲垣社長、渡邉光一郎会長のほか、営業・法令順守を所管する役員が対象で減額幅は10~50%。再発防止策として営業職員の採用の厳格化や教育制度の見直しに言及した。2021年度の営業職員の採用計画を、前年度比2000人少ない5000人程度とする。採用人員を減らし、教育に力を入れる。

 生保各社では契約実績に応じて営業職員の給与は変動する。「契約が取れない」などの理由で新規に採用した人員の半分が2年間のうちに離職する。歩合給であることが今回のような巨額詐取が横行する土壌となっていた。

 生保各社は対策に乗り出した。明治安田生命保険は22年度から営業職員の給与を固定給に切り替える制度改革を予定している。第一生命はどうするのか。歩合制を廃止したら契約件数が落ちるのは目に見えている。これが歩合給廃止に踏み切れない理由だ。