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大手ゼネコン4社、じわり収益悪化…「完成工事高総利益率」から透ける採算性低下の危険信号

文=編集部
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鹿島建設本社ビル(「Wikipedia」より/Rs1421)

 東京オリンピックは7月23日、東京・国立競技場で開会式が行われる。経済波及効果は東京都で約14兆円の需要をもたらすと試算された。オリンピック関連や東日本大震災の復興需要で、建設業界はこの5年ほど好調が続いてきたが、踊り場にさしかかった。

 オリンピックは昨夏に予定されていたから、多くの大型工事は決算期でいうと21年3月期までに完成した。加えて、新しい工事は国内外で新型コロナウイルスによる着工延期や中断が起こった。スーパーゼネコン4社の2021年3月期の連結決算は減収減益で終わった。鹿島建設が3期連続、大林組が2期連続の減益だった。

 連結売上高は1兆9071億円をあげた鹿島が8期ぶりに首位に返り咲いた。東京オリンピックのメイン会場となる新国立競技場を建設した大成建設は15.5%の減収となり、落ち込み幅がもっとも大きかった。一方、欧米の物流倉庫需要が旺盛だった鹿島は同5.2%減にとどまり、首位が逆転した。

 純利益は2期ぶりに大林組が987億円で僅差でトップとなったが、4社とも1000億円の大台を割り込み、新型コロナ禍による建設市場の収益悪化を裏付けた。大成建設と清水建設は純利益が20年3月期の水準の70%台と低迷した。

 4社の連結売上高の合計は20年3月期に比べ12.2%減の6兆6106億円にとどまり、連結純利益は同16%減の3670億円。公共工事は堅調に推移したものの民間設備投資計画の中止や発注時期の先送りなど工事の中断・遅延が影響した。工事関係者のコロナ感染防止対策の徹底に伴うコスト増や競争激化による採算の悪化が収益を圧迫した。

【スーパーゼネコン4社の2021年3月期決算】

          売上高            純利益

鹿島建設    1兆9071億円(▲5.2%)        985億円(▲4.6%)

        2兆 100億円(5.4%)          800億円(▲18.8%)

大林組     1兆7668億円(▲14.8%)       987億円(▲12.7%)

        1兆9100億円(8.1%)          715億円(▲27.6%)

大成建設    1兆4801億円(▲15.5%)       925億円(▲24.2%)

        1兆6400億円(10.8%)         630億円(▲31.9%)

清水建設    1兆4564億円(▲14.2%)       771億円(▲22.0%)

        1兆5500億円(6.4%)          580億円(▲24.8%)

(注:上段は2021年3月期連結実績、下段は2022年3月期連結予想。カッコ内は前の期比増減率。▲はマイナス)

22年3月期は完成工事高総利益率が低下

 国内の大型建築工事の進捗で4社とも2022年3月期は増収を見込む。4社の合計の受注高は21年3月期比6%増の5兆4300億円と3年ぶりに上向く見通し。ワクチンの普及で民間設備投資が一定の落ち着きを取り戻すと予想している。

 手持ち工事の繰越高の合計は21年3月期比6%増の8兆3224億円となるなど直近の工事は潤沢だ。大成建設が2兆3000億円台、大林組が2兆円台に乗せた。清水建設は1兆9000億円台、鹿島が1兆8000億円台。清水建設は2期連続のマイナスだ。

 民間工事の受注は回復する見通しだが、収益への貢献は遅れる。連結純利益は大成建設が31.9%減、清水建設24.8%減、大林組27.6%減、鹿島18.8%減と軒並み落ち込むと見ている。

 完成工事高総利益が完成工事高に占める割合である「完成工事総利益率」は、ゼネコンの本業である建設工事の採算性を示す指標である。22年3月期は鹿島が21年3月期比2ポイント減の11.6%、大林組が2.9ポイント減の10.4%、大成建設は4.3ポイント減の10.4%、清水建設も2.9ポイント減の9.4%となると予測する。東日本大震災などによる景気低迷から回復途上にあった16年3月期以来の低さで、22年3月期決算の利益が落ち込む主な原因となっている。

 震災復興事業はピークが過ぎ、オリンピックに向けたホテルや複合商業施設は引き渡しを完了した。首都圏の再開発事業など受注高が100億円を超える大型案件は受注競争の激化が指摘されている。

 中長期的に見ればコロナの影響で公共工事は縮小するのは避けられない。コロナ下で政府は大規模な財政出動を繰り返し、政府の債務は大幅に増えた。ワクチン接種が一巡し経済が正常化していく過程では、財政の健全性の観点から公共工事にメスが入る可能性が高い。労働者不足や働き方改革などで各社はDX(デジタルトランスフォーメーション)や自動化・無人施工などによる生産性の向上を急いでいる。

 株式市場はスーパーゼネコン4社を厳しく評価している。株式時価総額(6月24日終値基準)は大成建設が8240億円でトップ。鹿島7670億円、清水建設6797億円、大林組6536億円の順である。「中長期的な利益成長の差が時価総額に反映している」と建設業を担当するアナリストは分析しているが、4社とも決して時価総額が高いとはいえない。

(文=編集部)

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