ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 大企業、資本金1億円に減資急増
NEW

大企業、資本金1億円に減資の“中小企業化”急増、税負担を軽減…法人税、抜本的見直し議論が浮上

文=編集部
【この記事のキーワード】, ,
大企業、資本金1億円に減資の“中小企業化”急増、税負担を軽減…法人税、抜本的見直し議論が浮上の画像1
「Wikipedia」より

 東京観光のシンボル、はとバス(東京・大田区、非上場)は6月30日付で、資本金を3億5000万円から1億円に減らした。減資した部分は剰余金に組み入れる。6月24日に開いた株主総会で決議した。

 新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言発出で、すべてのツアーを休止するなど厳しい事業環境が続く。税負担を軽くし、手元資金を確保する狙いがある。はとバスの筆頭株主は東京都(持ち株比率37.93%)。JTB(同27.57%)、財団法人メトロ文化財団(同12.53%)、東京地下鉄(同10.02%)、いすゞ自動車(同8.28%)などが大株主だ。東京都のグループ企業である。

 資本金を減らす動きはコロナ禍で外出自粛などの影響を受けやすいバス事業者で相次いでいる。羽田空港や成田空港を発着するエアポートリムジンを運行する東京空港交通(東京・中央区)も6月30日付で、資本金を13億4000万円減らし、1億円にした。日本空港ビルデング(持ち株比率27.42%)、京成電鉄(同27.33%)、成田国際空港(同13.76%)などが大株主である。

 東武鉄道など東武グループで路線バスなどを運行する東武バス(東京・墨田区)は、6月22日に開いた株主総会で資本金を24億7635万円減らし1億円にすることを決めた。実施時期は9月1日。シャトルバスや観光バスの利用者が減り資金繰りが悪化した。

旅行、ホテル、外食でも同じ流れ

 旅行業やホテル、外食でも同じ傾向が強まっている。箱根ホテル小涌園(神奈川県箱根町)やホテル椿山荘東京(東京・文京区)を運営するホテル業界の名門、藤田観光(東証1部)は7月16日に開いた取締役会で第三者割当増資と減資を決めた。

 日本政策投資銀行(DBJ)から第三者割当増資で150億円を調達する一方、資本金を増資後の195億円から1億円に大幅にスリム化する。9月27日、臨時株主総会を開き、減資に関する株主の承認を得る。DBJは減資されるとわかっている資本を提供する。国策に沿っているとはいえ、金融機関としては脇が甘い、との辛口の批判もある。

 DOWAホールディングス(東証1部)が持ち株比率31.82%で筆頭株主。DOWAの前身は戦前の藤田財閥の中核企業、同和鉱業だ。戦後、観光部門が分離・独立したのが藤田観光である。

 2020年12月期の連結最終損益は224億円の大幅赤字となった。債務超過寸前の状態となったため、21年2月、婚礼や宴会場として知られる「太閤園」(大阪市)を売却し、332億円の特別利益を計上して債務超過を回避した。2月に募集した希望退職に315人が応じ、3月末に退職した。

 文系学生が志望する会社のトップだったこともある旅行最大手、JTB(東京・品川区、非上場)は3月31日付で資本金を23億400万円から1億円にした。筆頭株主は財団法人日本交通公社(持ち株比率30%)だが2位はJR東日本(同22%)、3位がJR東海(同13%)。JR西日本、JR九州、JR北海道が株主に名を連ねる。鉄道院(のちの鉄道省)が母体となってJTBの前身のジャパン・ツーリスト・ビューローを発足させた経緯から、旧国鉄勢の影響力が強い。

 居酒屋「金の蔵」などを展開する三光マーケティングフーズ(東証2部)は6月29日と30日と2回にわたり、資本金を29億円から5000万円に減らした。着物販売や結婚式場を運営する一蔵(いちくら、東証1部)は7月30日付で10億円だった資本金を5000万円にする。

 減資には株主への払い戻しを伴い、純資産が減る有償減資と払い戻しなしで純資産は変わらない無償減資の2種類がある。減資する企業の大半は無償減資で税負担の軽減につながる資本金1億円以下とする例が目立つ。

上場企業の減資には税金逃れの批判

 東京商工リサーチによると、2020年度(20年4月~21年3月)に減資した企業は3321社(前年度比35.6%増)で1年前と比べ873社増加した。1億円以下に減資し、税制上は中小企業に扱われる大企業は997社(同39.4%増)と約4割増えた。

 資本金が1億円以下になると法人税率の引き下げが期待できるほか、法人事業税については赤字でも納める必要がある外形標準課税が免除される。かっぱ寿司のカッパ・クリエイト(東証1部) が21年2月に98億円から1億円に減資した。スマホゲームを開発しているグリー(東証1部)も20年11月、資本金を23億円から1億円とした。

【資本金を1億円へ減資した主な企業】

※社名、業種、旧資本金、備考

・JOLED         有機ELパネル開発       877億円        非上場

・レオパレス21         賃貸アパート           812億円        東証1部

・オンキヨーホームエンターテイメント 音響機器製造 117億円  JQ上場,上場廃止へ

・カッパ・クリエイト    回転すしチェーン運営     98億円        東証1部

・スカイマーク      エアライン            90億円        非上場

・チムニー         居酒屋「はなの舞」など   57億円        東証1部

・毎日新聞社        日刊新聞発行           41億円        非上場

・グリー           スマートフォンゲーム開発 23億円        東証1部

・JTB           旅行代理店        23億円        非上場

 資本金は企業の格を示す指標とされてきた。資本金が1億円以下になると企業のイメージダウンは避けられないが、税負担が軽くなるという直接的なメリットがある。本来は経営体力がなくなった企業のための優遇措置を、上場している大企業が受けることには批判が根強い。2015年、シャープが資本金を1億円に減らすことを検討した際には、「税金逃れ」との批判が集中した。

 上場企業が、コロナ禍に悪乗りして、右にならえで1億円になることに対して、税制上の抜け道を封じるべきとの指摘も出ている。外形上の資本金の多寡だけで負担が変わる税制の見直しにつながる可能性がある。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

Business Journal

企業・業界・経済・IT・社会・政治・マネー・ヘルスライフ・キャリア・エンタメなど、さまざまな情報を独自の切り口で発信するニュースサイト

Twitter: @biz_journal

Facebook: @biz.journal.cyzo

Instagram: @businessjournal3

ニュースサイト「Business Journal」

大企業、資本金1億円に減資の“中小企業化”急増、税負担を軽減…法人税、抜本的見直し議論が浮上のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!