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イオンの矜持、安易な追随値上げ「しない」…トップバリュ価格据え置き、売上増も

文=Business Journal編集部
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イオン店舗(「Wikipedia」より)

 4月15日付朝日新聞デジタルによれば同日、流通大手イオンの岡田元也会長は「企業努力で最もリーズナブルな価格を提供するのが当たり前」「自分の給料を下げてでも値段を守ることだってあり得る」と述べた。「コスト削減の余地はまだある」といい、こうも語ったという。

「高額報酬をもらっている経営者もいる。それで価格転嫁やむなしって言っているのはちょっと理解に苦しむ。多少なりともやせ我慢の必要もあるのではないか。そこがだらしないような気がする」(朝日新聞デジタルより)

 昨年、世界的な異常気象や天候不順が起こった。海上運賃が上昇し、コロナ禍から回復した世界各地で需要が増えたことなど、価格高騰にはいくつもの要因が絡み合った。ロシアのウクライナ侵攻も加わり、原材料費の世界的な高騰を理由に食品メーカーの値上げが9000品目を超え、フリーパス状態になった。

 こうしたなかでイオンは21年9月13日、プライベートブランド(PB)「トップバリュ」の食料品の大半を同年内は値上げしないと宣言した。「トップバリュ」の食料品は3800品目あり、このうち生鮮食品や米、総菜、酒、ギフトなどを除く3000品目で価格を据え置いた。イオン、イオンスタイル、マックスバリュ、ダイエー、まいばすけっとなどイオン系の全国の1万店に置いてある商品が対象だ。

「いまこそ!年内価格凍結宣言」。値上げドミノに追随しない姿勢を明確に打ち出したが、価格凍結を22年3月末まで延長。価格を維持する品目は4800品目にまで拡大した。21年9~11月のPBの食品売上高が主要品目で前期比14%増と好調だったことが背景にある。イオンの方針が「消費者の支持を得た」ことを数字が裏付けた。

 さらに、「トップバリュ」の食品・日用品の5000品目について、6月末まで価格を据え置くことを決めた。春以降の消費者のいっそうの節約志向の高まりに応えるためだ。低価格帯の商品を求めるニーズは一段と高まった。

集客力の向上が価格凍結の成否のカギを握る

 PBは自社で商品を企画しているため、売る側に価格設定の裁量権があるのが強みだ。イオンがPB価格を据え置けるのは、まさに流通大手だからだ。競合する商品を生産するメーカー(ナショナルブランド)からは恨み節が漏れてくる。マヨネーズ、食用油、マーガリン、薄力粉、ソーセージなどPBとナショナルブランド品の価格差は開いている。

 もともとPBはナショナルブランド品に比べて広告宣伝費などを低く抑えることができるため利幅が大きい。だから価格凍結にも耐えられる。イオンは「今こそ全力で家計応援!」を強力にアピールし、消費者を引き付ける。農林水産省は「原材料価格があがるなか、適正に価格転嫁が進まなければ食品産業そのものが成りたたなくなる」としているが、きちんと原価計算をした上で現下の適正な利益水準はどのあたりなのかについての共通認識が必要になる。

ロシアのウクライナ侵攻で原材料高騰、金利差拡大、円安の三重苦

 2月24日、ロシアがウクライナに攻め込み、値上げは新しい段階に突入した。原油・原材料の高騰、日米の金利差拡大、円安という三重苦が企業を直撃したからだ。かつては、円安は輸出企業に追い風と捉えられたが、工場の海外移転も進み、急激な変化はむしろ逆風と受け止められている。「悪い円安」論が盛んなのは、日本企業の置かれた立場が劇的に変化したことと関係する。

 ロシアが戦争に突き進むなかで、イオンの岡田会長の「値上げをやせ我慢する」発言が飛び出した。イオンのPB価格の凍結は消費者には朗報だが、株式市場の反応は真逆である。小麦やエネルギー価格の上昇を売上増でどれだけ補えるかの、文字通り我慢比べになるからだ。「減益になる可能性のほうが高い」(食品担当のアナリスト)と慎重な見方が多い。

 岡田会長が「やせ我慢」をいつまで保つことができるのかにも関心が集まっている。ガソリン価格を抑えるために政府は石油元売りに“補助金”を出しているが、価格を凍結した流通大手に補助金を出してもいいのではないのかという声もある。

(文=Business Journal編集部)

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