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独立系のフジも傘下に…イオンとセブン&アイ、全国各地で地場スーパー争奪戦激化

文=編集部
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イオン店舗(「Wikipedia」より)

 流通大手のイオンの子会社、マックスバリュ西日本(MV西、広島市)と愛媛県が地盤の食品スーパー、フジ(松山市)は、2024年3月をめどに合併する。新会社はイオンの子会社となり、フジはイオンの傘下に入る。

 MV西の21年2月期の売上高にあたる連結営業収益は5632億円、店舗数は381店。フジは3153億円、店舗数は98店。両社の連結営業収益を単純合計すると8786億円(億円以上の端数を調整)、店舗数は479店。イズミ(広島市)の21年2月期の連結営業収益6797億円を抜き、商業施設やスーパーを運営する地場小売業でトップに立つ。

 MV西は19年3月、マルナカ(高松市)と山陽マルナカ(岡山市)を子会社にし、今年3月に吸収合併したばかり。今後、広島県東部や愛媛県といった空白エリアにも出店を進める。

セブン&アイは「ゆめタウン」を展開するイズミと業務提携

 中四国の流通業界を舞台にイオンとセブン&アイ・ホールディングスの流通2強が陣取り合戦を繰り広げている。セブン&アイは18年4月、中国地方の総合スーパー、イズミと業務提携した。仕入れや物流で連携を進め、イズミのノウハウを再建中のイトーヨーカ堂に取り入れる。

 セブン&アイは16年10月、40店の閉店を含むイトーヨーカ堂の構造改革を発表したが、最終損益で赤字が続く。祖業であるヨーカ堂の抜本改革の断行については、創業者である伊藤雅俊名誉会長への遠慮があったとされる。イズミとの提携の“機関車役”となったのは伊藤名誉会長の次男、伊藤順朗取締役常務執行役員。順朗氏のもとで外部の力を借りる新たな改革を押し進める。

 イズミの創業者、故・山西義政氏は戦後、広島駅前の闇市で干し柿を売り、身を起こした。出店を西日本に絞り、外部企業を積極的にテナントとして誘致する「ゆめタウン」で大成功した。山西氏の著書『ゆめタウンの男』(プレジデント社)の表紙には、「セブン&アイHLDGS名誉会長推薦!」「戦友、山西さんの本、勉強になりました」と刷り込まれている。

<「これからはスーパーマーケットですわ。スーパーをやりんさい」「そんなにいい商売なら、あんたがやれや。この土地を無条件で貸したる。やってみな」。一瞬、言葉に詰まりました。しかし、私はすぐにこう答えていたのです。「ほんじゃあ、やってみようかね」>(『ゆめタウンの男』より)

 伊藤氏の一言で山西氏はスーパーを始めた、と書かれている。娘婿の山西泰明氏が後を継いで社長に就いた。大ヒットしたNHK連続テレビ小説『おしん』のモデルとなったヤオハン創業者、和田カツさんの五男。長兄がヤオハングループを一大流通グループチェーンに育て上げた和田一夫氏である。

 山西社長はセブン&アイとの提携をテコに売上高1兆円を目指す。

イオンはフジを取り込む

 セブン&アイとイズミが提携した半年後の18年10月、イオンはフジと資本業務提携した。イオンは19年2月、フジの発行済み株式の15.0%を取得。一方、フジはイオンの子会社MV西の発行済み株式の7.61%を取得した。

 イオンは地域ごとに食品小売企業を統合し、各地域でトップシェアを取っていく方針を打ち出している。中四国エリアでは食品スーパー子会社のMV西、マルナカ、山陽マルナカを経営統合する。イオンの岡田元也会長は、「フジをイオングループの中四国エリアの中核企業に据える」考えを示した。

 今回、フジがMV西と経営統合して、イオンの傘下に入るのは既定方針とされる。これまでフジはどこの共同仕入れ機構にも加盟していない独立系だが、09年から出店エリアが重ならないユニー(名古屋市)、イズミヤ(大阪市)とPB(プライベートブランド)の共同開発を行ってきた。ところが、イズミヤは14年6月、阪急阪神百貨店を運営するエイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の傘下に入り、ユニーは18年10月、ディスカウントストア最大手ドンキホーテホールディングスの子会社になることが正式に決まった。フジの動向が注目されていたが、フジが選択したのがイオングループに加わることだった。

 持ち株会社に移行するフジは上場を維持し、フジに合流するMV西は22年3月に上場廃止となる。イズミの大型ショッピングセンター「ゆめタウン」は中国・四国・九州で圧倒的な知名度を誇る。イオンは、モール型ショッピングセンター、イモンモールを核に食品スーパーを配置して「ゆめタウン」包囲網を築く。

 イズミはセブン&アイとの連携をテコに新たな闘いを進める。すでに店舗でセブンプレミアムの商品を扱っているが、イトーヨーカ堂と、より価格を抑えたPBの食品を共同開発する。イオン=フジはイズミの本拠地である広島市に殴り込みをかけた。イズミはセブン&アイと組んで迎え撃つ。イズミとフジの広島決戦が見ものだ。

 セブン&アイとイオンの代理戦争の帰趨がどうなるかだ。中四国の、近未来の流通地図を占う試金石となる。

(文=編集部)

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