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楽天モバイル、1年以内のプラチナバンド再割り当て要求…大手3社に費用負担も要求

文=Business Journal編集部、山口健太/ITジャーナリスト
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楽天グループの三木谷浩史会長兼社長(撮影=編集部)
楽天グループの三木谷浩史会長兼社長(撮影=編集部)

 楽天モバイルプラチナバンドの再割り当てを求めて、既存の大手キャリア3社と激しく対立している。8月に開かれた総務省の会合には、楽天モバイルの矢澤俊介社長が出席し、1年以内のプラチナバンド使用や、移行にかかる費用を大手3社が負担することを要求。さらに、これまでの総務省とキャリア各社による会合での議論についても「時間稼ぎをしているとしか思えない」などと厳しく批判した。

 1GHz以下の周波数帯で、障害物の裏に回りやすく、より広い範囲に届きやすいプラチナバンドは現在、楽天モバイルには割り当てられていないが、法改正により、再割当て制度を含む電波法の一部改正が成立して今年10月1日に施行。そこで楽天モバイルは既存の大手携帯電話会社のNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに割当てられているプラチナバンド(800〜900MHz帯)について、各社から5MHz×2幅ずつ分割して楽天モバイルに割り当てることを要求している。

 大手3社は、電波を増幅して届きにくい場所に届けるレピーターの交換や、分割した周波数同士の干渉を防ぐ受信フィルタの基地局への設置を行う必要があるため、移行には10年を要すると主張。これに対し楽天モバイルは、レピーターの交換は郵送などを利用すれば1年で完了でき、受信フィルタの設置は国際基準に照らし合わせて不要と反論している。

 さらに楽天モバイルは、移行に伴う費用について大手3社が負担すべきとも主張。すでに周波数帯の免許を持っている事業者から、新たに免許を取得した事業者に周波数帯の再割り当てがなされた場合は、既存の免許人が原状回復の義務を負うという改正電波法を根拠にあげている。 

「なぜ10年も必要なのか。大きく疑問」

 楽天モバイルは2年前の2020年から、総務省の有識者会議「デジタル変革時代の電波政策懇談会」や「移動通信システム等制度ワーキンググループ(WG)」でプラチナバンドの再割当てを要求。今年に入り、総務省の「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」でも非公開で議論が進められてきたが、8月には初めて公開形式で会合が開かれ、楽天モバイルの矢澤俊介社長は、

「1年以内にプラチナバンドの利用を開始したい」

「なぜ10年も必要なのか。大きく疑問」

「なぜ楽天モバイルに費用負担を求めるのか。技術的・論理的にも理解できない。(既存大手)3社合計で35兆8000億円の営業利益を出している。赤字の楽天モバイルに対して費用負担を求めるのは、制度的にもまったくおかしな話」

と主張。

 さらに、これまでの総務省の会合の進め方についても

「過去、何度か議論したが合理的ではない。時間稼ぎをしているとしか思えない発表が多々あった。到底納得できず、本当に国民のことを考えているのか甚だ疑問」

と疑問を呈し、大手3社が受信フィルタ設置が必要とする根拠となる実証実験の結果を提出していないとして、

「春から求めてきたが、いまだに結果が出ていないことは甚だ疑問だ」

と批判。議論が長期化する場合は「1社もしくは2社にターゲットをロックして再割り当てを要望する」と、大手3社に揺さぶりをかける発言もみられた。

 全国紙記者はいう。

「通信の世界で10年というのは、技術が1周りも2周りも世代交代する間隔なので、10年後にはプラチナバンドという概念自体が存在するかもわからない。つまり大手3社にプラチナバンドを楽天モバイルに渡す気はまったくなく、総務省も後ろ向きで議論が延々と進まないため、楽天モバイルとしては公開の場を使って世論に訴え出たということだろう。

 かつてソフトバンクが携帯事業に参入したとき、公開の場で孫正義社長が総務省やドコモ、KDDIへの批判を展開してプラチナバンドの免許獲得に成功したが、同じ手法を取ったのかもしれない。

 楽天モバイルの主張内容は法律に則ったもので正当性があり、移行費用についても楽天モバイルがきちんと概算を提示しているのに対して大手3社が提示していなかったりと、大手3社が“先延ばし作戦”に出ているのは明らか。ただ、再割り当てが承認されるためには、楽天モバイルが他社が免許を持つ周波数帯に関してより有効活用できることを証明する必要があり、そこは大きなハードルとなってくるだろう」

電波は国民共有の財産

 楽天モバイルがここまでプラチナバンドの再割り当てを急ぐ理由について、ITジャーナリストの山口健太氏はいう。

「楽天モバイルの人口カバー率は6月には97.6%に達し、2023年中に99%を予定しています。この人口カバー率という数字は、日本全国を一定区画ごとに区切り、その区画内の50%以上でつながればエリアとするものです。しかし楽天が使っている1.7GHz帯の電波は直進性が高く、入り組んだ場所などに届きにくい性質があります。そのため、『エリア内のはずなのにつながらない』といった現象が起こりがちです。

 かつてはソフトバンクも同じ現象に悩まされており、2012年に900MHz帯のプラチナバンドを獲得した後も、しばらくは『つながりにくい』との評価が定着していました。いまや日本の携帯ユーザーにとっては大手3社の高い品質が当たり前です。現状のままでは楽天がせっかくコストをかけて獲得したユーザーも他社に移りかねません。楽天が『第4のキャリア』としての地位を盤石にするために、プラチナバンドの獲得は必須といえるでしょう。

 では、楽天モバイルの再割り当て要求は正当といえるのか。

「電波は国民共有の財産であることから、有効活用できる事業者に割り当てるべきです。しかし、何をもって『有効活用』とするのか、各社の意見は分かれています。大手3社は兆円単位の費用をかけて全国にエリアを広げ、日本のデジタル化に欠かせないインフラを維持しています。それを支えてきたプラチナバンドは大きな利益の源泉でもあることから、あらゆる手を使って抵抗を試みることは間違いないでしょう。さまざまな影響を考慮すると、移行にはおおむね10年が必要と大手3社は主張しています。

 これに対して楽天は、日本の携帯料金を下げてきたのは自社であると主張し、他社は電波を使って儲けすぎていると語気を強めています。ソフトバンクの場合、当時の孫社長は電波の割り当てについて総務省と対決姿勢を示していたことがありますが、楽天も同じくらい強気にいかなければ電波は取れないと考えているのかもしれません」

(文=Business Journal編集部、山口健太/ITジャーナリスト)

山口健太/ITジャーナリスト

山口健太/ITジャーナリスト

1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。
山口健太

Twitter:@yamaguc_k

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