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『好き』と『顧客課題』の掛け算。東京ドームの挑戦に寄り添った、TECHFUNDの実装まで導く伴走力

2026.01.13 2026.01.13 12:10 企業

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プロフィール
木村 亮 氏(株式会社東京ドーム 新規事業室 プロダクトオーナー)
伊勢 隼人 氏(株式会社TECHFUND 担当アクセラレーター)

エンターテインメントの聖地、東京ドームが「文学」という新たな領域に挑んでいる。社内起業提案制度「mokuMOKU」から生まれた短い文学の投稿・閲覧サービス『コトアム』だ。発案者でプロダクトオーナーの木村亮氏は、新規事業経験ゼロからこの挑戦をスタートさせた。そのアイデアの種を事業として花開かせた裏には、仮説検証から開発まで二人三脚で歩んだTECHFUNDの存在があった。徹底した伴走支援の軌跡を、株式会社東京ドームの木村氏、株式会社TECHFUNDの伊勢氏にお話を伺いました。

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木村氏の「mokuMOKU」の応募理由
 人々を熱狂させる体験を自分の手で創り出したいという入社時からの強い想いがあった
 自身の創作活動での課題感から「誰も筆を折らない世界」を実現したかった
 アイデアを形にし、発散できる場を強く求めていた

「TECHFUND」の支援内容
 ユーザーの本質的な課題を探り当てるための、深掘り型のインタビュー手法を指導された
 事業全体のロードマップに基づいた冷静なアドバイスで、事業の軌道修正を支援された
 開発経験のない担当者と開発チームの間に立ち、ビジネスと開発を一気通貫で支援された

支援結果
 約300人へのインタビューを経て、当初のEC案から現在のサービス形態へとピボットできた
 実証実験でユーザーからの熱狂的な声を集め、事業化承認強力な材料にできた
 新規事業の経験が全くない状態から、最終的に事業の立ち上げを達成することができた

事業の原点は、創作者として感じたリアルな課題。「誰も筆を折らない世界」を目指す『コトアム』の着想

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──木村様が新規事業制度「mokuMOKU」に応募されたきっかけについて、詳しくお聞かせください。

東京ドーム(木村):入社動機は、5万人が集まる東京ドームという舞台で、人々を熱狂させる体験を自分の手で創り出したいという思いでした。最初の配属先は営業部署。お客様と最も近い立場で、東京ドームシティという会社を知り、お客様を知ることに日々必死で、新規事業をしたいという視点はまだありませんでした。入社3年目から財務部に異動となり、経営視点を持てるため非常に勉強になり楽しかったのですが、自分のアイデアをサービスや企画として形にする機会はあまりありませんでした。その中で「こんなものがあったら面白いのに」というアイデアを抱え続けており、それを形にできる場として「mokuMOKU」に魅力を感じました。

──第1回にも応募されたそうですが、結果はいかがでしたか。

東京ドーム(木村):東京ドームシティを活用したマッチングアプリを提案しましたが、結果は良くないものでした。当時は「お客様の課題をどう解決するかよりも、自分がワクワクするアイデアに執心していて、「お客様がお金を払ってでも使いたいか」という視点が欠けていたと思います。アプリ自体が難しいもので、勝ち筋がない中では難しい提案だったなと今はそう考えています。また、その時の経験が、後の考え方の変化につながりました。

──第2期では原体験に基づいた『コトアム』のアイデアを提案されたとのことですが、その背景を教えてください。

東京ドーム(木村):きっかけは、私が短歌の創作者として活動する中で抱いた課題感でした。実際に作品を投稿する中で、「もっと多くの人に読んでほしい」「大切に扱ってもらえたら嬉しい」と感じる一方で、X(旧Twitter)などの既存SNSでは作品が流れてしまい、一度「いいね」がついても二度と読まれないことが多かったのです。その状況はとてもつらく、創作を続ける気持ちが折れてしまう人も多く見てきました。そうした創作者としての原体験や課題感が、『コトアム』を立ち上げる出発点でした。「誰も筆を折らない世界をつくりたい」という思いが、サービスの核となっています。

事業の根幹を築いたのは「なぜ?」を深掘りする質問力。アクセラレーターから学んだ本質課題の見つけ方

──新規事業の経験がない中で、TECHFUNDの支援はどのように始まったのでしょうか。

東京ドーム(木村):mokuMOKUのプログラムを通じて、担当アクセラレーターの伊勢さんと出会いました。冗談で「人生の師!」と呼んでいますが、振り返ってみると、この新規事業提案制度に挑戦して良かったと思える根幹には、伊勢さんの存在があります。新規事業の経験が全くない人間がここまで事業化を進められたのは、TECHFUNDさんの支援のおかげです。

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特に印象に残っているのは、ユーザーインタビューの手法を教えていただいたことです。「こういうアイデアはどうですか?」と直接聞くのではなく、相手の行動や時系列に沿って質問し、「なぜそうなのですか?」と深掘りすることで、表面的なものではなく、本質的な課題を探り当てるというアプローチです。この教えが、私の中で最も大きなヒントになりました。毎週の定例で締め切りが設定されるなど、伴走しながら進捗を管理していただいたことも、非常にありがたかったです。

──新規事業を進める中で、特に印象的だった伊勢さんからのアドバイスはありますか?

東京ドーム(木村):例えば、僕が「この機能を先に開発したい」と思った時に、「それはまだ早いんじゃないですかね」といった形で、事業性の観点からストップをかけてくれることがよくありました。僕は突き進んでしまうタイプなので、そういった冷静な指摘は非常に助かりますね。また、事業を進める上では法務やマーケティングなど様々な部署との連携が必要になりますが、事前に計画的なロードマップを作って対応すべきだ、と助言してくださったのも印象に残っています。

TECHFUND(伊勢):木村さんから学んだことですが、新規事業は「好き」という気持ちに勝るものはないと感じています。「好き」だからこそ、普通なら10人、20人で十分と言うところを、300人近くものユーザーインタビューを愚直にやり遂げられる。その圧倒的な「累積思考量」が、初期のユーザーの熱狂を生み出したのだと思います。我々の役割は、その熱意をしっかりと事業の成功に結びつけられるよう、伴走していくことだと考えています。

グランプリ獲得、そしてピボット。ユーザーの声に耳を傾け「作品が大事にされる仕組み」へと辿り着いた道のり

──最終的にグランプリを受賞されましたが、その時のアイデアは現在の『コトアム』とは異なるものだったのですね。

東京ドーム(木村):はい。当時は自費出版の文学作品を売買できるECプラットフォームの案でした。審査員の方々は文学に馴染みが薄いながらも、ピッチを聞いて「こんなにユーザーがいるのか」と、その可能性を評価してくださいました。グランプリを獲得した瞬間は、社会人人生で一番嬉しかったですね。
ただ、優勝したからといって、そのまま進められるわけではありません。伊勢さんから「本当にそうなの?」と根本的な問いを投げかけられ、改めて自分のアイデアを見つめ直すことになったのです。実際に個人書店でECサイトを運営されている方にインタビューをすると「魅力的な本を揃えても、オンラインでは1日に1冊も売れない日がある」という現実がありました。一方で、オフラインでは文学作品の即売会「文学フリマ」は急激に盛り上がっている。この差は何なのだろうと、深く考えるきっかけになりました。

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──その分析の結果どのような結論に至り、事業の方向性を変えたのでしょうか?

東京ドーム(木村):文学フリマには「お祭り感」があるのはもちろんですが、それ以上に重要なのは「人が常に滞留し、回遊している場」であることだと気づきました。そして、作品が確実に読者の手元に渡り、記憶にも記録にも残る。つまり「作品が大事にされる仕組み」があるからこそ、あれだけの熱気が生まれる。さらに言うと、「自費出版」「文学フリマ出店料」「(遠方ならば)文学フリマへの交通費・宿泊費」と決して少なくない費用を払わないと解決できない深い課題なのだと分析しました。そこから、まずは人が滞留・回遊する場と、作品が大事にされる仕組みを解決しなければならないと考え、現在の『コトアム』の形へと大きく方向転換しました。

──大きな決断の後、実証実験の結果はいかがでしたか。

東京ドーム(木村):「コトアム」のリリースにあたり、検証版のサービス「ブンサイ!」を最小限の機能で試験的にリリースしたのですが、想定をはるかに上回る反響をいただきました。LINEに登録すると、朝と夜に5作品ずつランダムに作品が届くというシンプルなものでしたが、ありがたいことに多くのポジティブな声をいただくことができました。例えば、「今まで知らなかった作家さんに出会えて嬉しい」「このサービスがきっかけで短歌を始め、賞を取りました」といった声が、想定していた数倍から数十倍の規模で届いたのです。その多くの反響やユーザーの方々の声をありのまま役員に伝えることで、事業化への説得材料とすることができました。

──『コトアム』を通じて実現したい世界について教えてください。

東京ドーム(木村):『コトアム』は、音楽アプリのプレイリストのように、好きな文学作品をテーマごとに集めて何度も読み返せるサービスです。自分の作品がSNSの流れに埋もれることなく、誰かの本棚に大切に置かれて何度も読み返してもらえる感覚を味わってもらうことを目標としています。そして創作を続けられる環境を整え、「誰も筆を折らない世界」をつくりたいと考えています。読者にとっては、これまで能動的に探さなければ出会えなかった文学に、TikTokのように受動的に触れられる機会を提供したい。文学の新しい入り口になりたいと考えています。

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【関連プレスリリース】東京ドームグループの社内新規事業提案制度から初の事業化 ことばを投稿・編んで楽しむ新感覚SNSアプリ『コトアム』リリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000335.000077656.html

事業を「自分ごと」として捉える伴走者。ビジネスと開発の壁を溶かすTECHFUNDの一気通貫支援

──TECHFUNDの支援プログラム「Hi STARTUP PROGRAM for BIZ」の価値はどこにあると感じますか?

東京ドーム(木村):TECHFUNDさんは、事業を自分ごととして捉え、極限まで伴走してくださる方々だと感じています。特に、ビジネスと開発の両面を「一気通貫」で支援していただけるのはTECHFUNDさんならではの価値だと思います。私自身は開発経験が全くなく、どう頼めばいいか分からず不安でしたが、開発側と齟齬があった際には伊勢さんが間に入って話をしてくださり、解像度が荒い部分を補完してくれるなど、非常にありがたかったです。

TECHFUND(伊勢):木村さんは、周りがつい助けたくなるパーソナリティを持っており、言うなれば「愛され力」があります。ただの業務としてではなく、「木村を助けよう」「このプロダクトを成功させよう」と周りを本気にさせるんです。実際に『コトアム』のリリースイベントでは、当社のメンバーだけでなく、東京ドームの新規事業室の皆さんが総出でブースに立ち、一日中一緒にチラシを配ってくれました。そうした周りの心を動かす力こそが、彼の最大の強みだと思います。

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──どのような企業にTECHFUNDの支援を勧めたいですか。

東京ドーム(木村):純粋に、私のように新規事業の経験が全くない人間がここまで事業を進められているのは、TECHFUNDさんの支援のおかげだと感じています。他の企業で新規事業をされている方とお話しすると、外部のメンターを付けずに進めた結果、プロダクトが磨かれないという課題を抱えているケースがありました。私と同じような人材を抱えている会社が新規事業を始める際には、ぜひ一度TECHFUNDさんにお声がけしてみてほしいと思います。

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木村 亮 氏
 株式会社東京ドーム 新規事業室 プロダクトオーナー
 2019年に株式会社東京ドームに入社。東京ドーム部、飲食&物販部を経て、2022年より財務部と現職を兼務。事業化の承認が下りたことで、2024年より新規事業『コトアム』専任担当となった。人々が熱狂する体験を創りたいという想いから、社内起業提案制度「mokuMOKU」に応募。自身の短歌創作の経験から着想を得た『コトアム』でグランプリを受賞し、事業化を牽引する。

伊勢 隼人 氏
 株式会社TECHFUND  Accelerator Div.  アクセラレーター
 アクセラレーターとして数多くの新規事業を支援する。東京ドームの「mokuMOKU」では、木村氏のメンターとしてアイデアの壁打ちから仮説検証、ユーザーインタビュー、事業計画の策定まで、3年以上にわたり伴走を続けている。大手企業の新規事業やBtoB SaaS、富裕層向けサービス、エンジニアとしての開発経験に加え、海外釣具メーカーと日本独占契約を結び、ECと卸売で展開した実績など、多様な規模と領域を活かした支援を行っている。

東京ドーム様新規事業「コトアム」LP:https://www.tokyo-dome.co.jp/kotoamu/

TECHFUND HP:https://techfund.jp/

お問い合わせ:https://techfund.jp/contact

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BusinessJournal編集部

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