日銀利上げで住宅ローンの「元金が減らない」問題…大手5行「10年固定」2.7%超へ

●この記事のポイント
・住宅ローン金利が本格上昇局面へ。10年固定は2.7%超となり、変動金利も日銀利上げで上昇不可避。表面上は安心に見える「5年ルール」に潜む落とし穴とは。
・変動金利の本当のリスクは、返済額がすぐに増えない点にある。利息が増え、元金が減らない「未払利息」の仕組みが、将来の家計を静かに圧迫する。
・固定か変動かの判断軸は「金利差」から「耐久力」へ。すでに変動で借りている人が今すぐ取るべき防衛策と、後悔しないための視点を整理する。
住宅ローン金利の上昇が、ついに「無視できない段階」に入った。
大手銀行5行は2025年12月30日、2026年1月の10年固定型住宅ローン金利を一斉に引き上げると発表した。最優遇金利の平均は2.734%。かつて「歴史的低金利」と呼ばれた1%台前半の世界は、完全に過去のものとなりつつある。これから住宅購入を検討する層にとって、2%台後半の固定金利は心理的な重圧だ。
一方、多くの既存契約者が利用する変動金利は今回は据え置きとなった。だが、「変動ならまだ大丈夫」と安堵するのは早い。水面下では、過去30年近く日本の住宅ローン市場が経験したことのない、“金利上昇ドミノ”のスイッチが、すでに押されている。
●目次
日銀利上げで「年内」に変動金利も動く
固定金利の上昇は、長期金利(10年国債利回り)の上昇を直接反映したものだ。背景には、インフレ率の高止まりや、海外金利の高水準がある。
一方、変動金利を左右するのは、日本銀行の政策金利だ。日銀は2025年12月、政策金利を0.25ポイント引き上げ、0.75%とした。これは住宅ローン市場にとって決定的な意味を持つ。銀行が企業向け融資の基準とする短期プライムレート(短プラ)は、政策金利に連動するためだ。
金融関係者の間では、「今回の利上げで、変動型住宅ローンの基準金利が年内に引き上げられるのは既定路線」(大手行OB)との見方が支配的だ。
住宅金融に詳しいファイナンシャルプランナーの田中真一氏は、次のように指摘する。
「多くの人が誤解していますが、変動金利が“低い”のではなく、政策的に“抑え込まれていた”だけです。日銀が正常化に舵を切った以上、変動金利も時間差で必ず追随します」
市場では、2024年以降の断続的な利上げによって、住宅ローンの基準金利が累計で1%以上上昇する可能性も指摘されている。仮に変動金利が固定金利を逆転する局面が訪れれば、家計への衝撃は極めて大きい。
月1万円増は序章、本当の恐怖は「5年ルール」
金利が1%上昇すると、返済額はどれほど増えるのか。
例えば、残高3,000万〜4,000万円の住宅ローンでは、月々の返済額が1万円以上増えるケースが一般的だ。年間で12万円超。物価高と実質賃金の伸び悩みが続くなか、決して軽視できる負担ではない。
だが、変動金利の本当のリスクは、「支払額がすぐには増えないこと」にある。そこに潜むのが、「5年ルール」と「125%ルール」という、構造的な仕組みだ。
多くの銀行の変動金利型住宅ローンには、「金利が上昇しても、5年間は毎月の返済額を変えない」というルールがある。
一見すると、家計に優しい安全装置のように見える。だが実際には、問題の先送り装置でもある。返済額が据え置かれている間も、銀行内部では毎月、利息と元金の配分が再計算されている。金利が上がれば、当然、返済額のうち利息が占める割合が増加する。その分、元金の返済は後回しにされる。
田中氏はこう語る。
「表面的には“いつも通り返している”ように見えても、実態は利息ばかり払って元金がほとんど減らない状態に陥るケースが増えます。これが家計の見えにくい劣化です」
「未払利息」という静かな借金地獄
さらに深刻なのが、未払利息の存在だ。金利が急上昇し、計算上の利息額が毎月の返済額を上回った場合、その差額は未払利息として積み上がる。これは免除されるわけではない。将来必ず支払う必要のある“後回しの借金”だ。
最終的に、
・6年目以降の返済額に上乗せ
・完済時の一括請求
といった形で家計を直撃する。
「“毎月返しているのに、ローン残高が減らない”という相談は、今後確実に増えます」(田中氏)
なお、6年目の見直し時にも、返済額の増加は従来の1.25倍までに抑える「125%ルール」がある。しかし、これは負担増を緩和する一方で、完済までの期間を事実上延ばすことにもつながる。
「固定」か「変動」か、いま選ぶべき道
では、これから住宅ローンを組む人は、どちらを選ぶべきなのか。これまでは「金利差」を理由に変動一択という空気が強かった。しかし、金利上昇局面に入った今、その前提は大きく揺らいでいる。
固定型が向いている人
・金利動向に一喜一憂するストレスを避けたい
・教育費や老後資金など、将来の支出が読めている
・2.7%台を“インフレ保険料”と割り切れる
変動型が向いている人
・十分な金融資産があり、金利上昇に耐えられる
・繰り上げ返済で元金を積極的に減らせる
・「固定を上回る前に逃げ切る」明確な戦略がある
すでに「変動」で借りている人の防衛策
すでに変動金利で借りている場合、慌てて固定へ借り換えるのは現実的でないケースが多い。金利差が大きく、返済額が急増するためだ。重要なのは、“見えない金利上昇”への備えである。
(1)「つもり貯金」を始める
金利が上がったと仮定し、月1万〜2万円を別口座に積み立てる。将来の返済増や繰り上げ返済の原資になる。
(2)元金の減り方を確認する
返済予定表を定期的にチェックし、元金が計画通り減っているかを確認。減りが鈍い場合は、期間短縮型の繰り上げ返済を検討したい。
「低金利は永遠」という神話は、完全に終わった。仕組みを理解せず、銀行任せにしていれば、数年後に“ローンが終わらない現実”に直面することになりかねない。住宅ローンは、借りた瞬間ではなく、返し続ける過程で差がつく金融商品だ。その差は、静かに、しかし確実に家計を侵食する。
(文=Business Journal編集部)











