万代はセブン&アイHDと手を組むことで出店攻勢を強める。17年2月期までの2年間に10店を出店。このうち3店は店舗面積が5000平方メートル規模の大型店となる。新規出店をテコに、売上高を現在の3000億円弱から23年2月期までに5000億円を目指す。
九州進出
関西、中国地域に橋頭堡を築いたセブン&アイHDが次の目標に据えているのが、九州進出だ。セブンはすでに九州に進出しているが、イトーヨーカ堂の出店は広島までだ。イトーヨーカ堂の九州初進出の候補地として話題になっているのが、九州大学箱崎キャンパスの跡地である。総面積43万平方メートルという広大な土地だ。福岡市と九州大学が共同で作成した「九州大学箱崎キャンパス跡地計画」では、商業施設のほか、医療、福祉、防災、生活支援、教育、人材育成を盛り込んだまちづくりの推進を謳っている。まちづくりエリアについて、今秋にも開発事業者の公募が行われる見通しだと地元メディアは報じている。
大規模複合商業施設を提案しているのは、イオンモールと地元デベロッパーの福岡地所の共同企業体、住友商事、セブン&アイHD子会社の商業施設デベロッパー、モール・エスシー開発である。モール・エスシー開発が落札すればイトーヨーカ堂の九州初進出が実現すると、流通業界は色めき立っている。
これまでセブン&アイHDが地方に進出する際には、すでに提携している地元スーパーの独自性を損なわないよう配慮してきた。13年の北海道進出ではダイイチ、14年の岡山では天満屋ストア、15年の大阪進出では万代の独自性を尊重してきた。
九州・山口地区では、大型商業施設「イオンモール」を運営するイオングループと、大型ショッピングセンター「ゆめタウン」を展開するイズミが競い合っている。セブン&アイHDの鈴木会長は12年10月3日付日本経済新聞のインタビューで次のように語り、イズミの経営手法を高く評価している。
「スーパーのあり方を全部変える。イオンやイズミが利益率を維持できるのは、とっくに従来型の総合スーパーの運営に見切りをつけたからだ。ショッピングセンター事業を中核に据え、総合スーパーの“敵”だった専門店を導入。その集客力を取り込んだ事業モデルに転換した」
「セブン&アイHDがイズミを九州進出のパートナーに想定していることは間違いない」(業界筋)との見方も強いが、両者が組めば九州でもスーパー業界の2強、セブン&アイHDとイオンの戦いが繰り広げられることになる。
(文=編集部)