5月末、大手家電量販店チェーンのヤマダ電機が46店舗を閉鎖した。5月25日に発表した時点ですでに3店舗を閉鎖済みであり、残りの43店舗については発表直後の閉鎖となったため、地域の消費者や従業員を驚かせた。
一方、年内に新規出店も行う予定であり、ヤマダとしては「店舗のスクラップ&ビルド」だとしている。閉店するのは、テックランドNew江東潮見店(東京都江東区)、同名古屋南丹後通り店(愛知県名古屋市)、同枚方店(大阪府枚方市)、同新南陽店(山口県周南市)など地方や郊外にある不採算店が中心。これまでの拡大路線を転換し、東京・八重洲など都市部の大型店や免税専門店といった収益力の高い店づくりに注力するとしている。
日本全国津々浦々に、家電の大型量販店舗を展開する。自社だけの店舗展開だけでは間に合わなければ、業界他社をM&A(合併&買収)して「マーケット・カバレッジの最優先」という戦略を徹底する。これが従来のヤマダの「勝てる王道戦略」だった。その結果、15年3月期末での店舗数は1016店舗にまで達していた。
この多店舗戦略について筆者は、過去に本連載記事で限界がきていることを指摘していた。
「日本に『市』は790ある(2008年時点、以下同)。『市』となる要件の一つは人口3万人以上で、つまりヤマダは日本のすべての3万人以上の地域市場に出店を終えてしまっているということだ。ちなみに人口5万人以上の都市数は541にすぎない。ヤマダの1店舗当たりの平均年商は19億円程度ということになるが、3万人規模の市には1万世帯くらいが生活すると見て、それらの商圏で全世帯が年間にヤマダの店舗で19万円程度の消費をしているという計算が成り立つ」(2014年12月12日付本連載記事より)
ヤマダの山田昇社長は今回の閉店を発表する直前の5月21日付朝日新聞のインタビューで「出店余地はなく、ビジネス・モデルを変えないといけない」と語っており、今回のスクラップ&ビルドは明確な戦略転換だと認めている。つまり全社経営戦略の本格的な変更による電光石火の大量店舗閉鎖だったのだ。そんなことができるのは、創業社長である山田氏ゆえだろう。
相次ぐメガ・リテールの破綻
業績低迷について、山田氏の悩みは深い。連結の年商は11年3月期に2兆1500億円とピークを記録し我が世の春を謳歌したが、その後は減少の一途。15年3月期では売上高1兆6643億円(前年同期比12.1%減)、営業利益199億円(前年同期比41.9%減)、経常利益355億円(前年同期比29.2%減)という結果に沈んでいる。
実店舗の巨艦主義に走ったメガ・リテール(大規模小売企業)が破綻した例は記憶に多い。百貨店ではそごうが、総合スーパー(GMS)ではダイエーがそれぞれ一時は栄華を誇ったが、前者は小売業としては当時(00年)日本最大の負債を抱えて民事再生法を申請し、後者も経営破綻して今年1月イオンに救済合併された。