アメリカでも全米最大の百貨店チェーンだったシアーズ・ローバックが、不振のため05年に業界下位のKマートに実質救済合併された。家電量販店では全米に4400もの店舗を展開していた業界2位のラジオシャックが、今年2月に倒産した。
試行錯誤というより迷い
では、ヤマダのようにダウン・トレンド(下降傾向)に入ってしまった業界トップ企業が復活する方策はあるのか。
率直にいえば、それは難しい。突然ではないが、恐竜が死滅するようなものだ。大きくて栄華を誇っていただけに、なかなか環境の変化に適応できない。14年末にヤマダが街の中小電器店との提携を発表した際、筆者は前出記事でこう指摘している。
「課題としては、個々の電器屋がどれだけ親切・親身になって高齢者世帯に入り込めるかだ。電器屋が製品の配置やインストールだけでなく、便利屋を兼業して家具の移動や配線工事、不要品の引き取りまで手がけるようになったら、その世帯の消費の大きな部分を引き受けられるようになる。売るモノは家電に限らず、総菜から、弁当、食材まで納品する仕組みまで視野に入る。専用タブレットを世帯にあまねく配ってしまうくらいのビジネス・モデルまで踏み込めば、ヤマダとしては一気に商機が広まるといえよう」
だが、こうした動きは本格的に起こりそうにない。
ヤマダが住宅メーカー、エス・バイ・エルを傘下に収めスマートハウス事業に乗り出したのが11年のことだったが、顕著な業績を残せていない。今年5月には「ビジネスをスピードアップするため」(山田氏)にソフトバンクとの資本・業務提携を発表したが、同社の経営方向の試行錯誤というより迷いを強く感じる。
業界の恐竜は、変化する環境に戸惑いながら徐々に体力を奪われて、足を止めてしまうのではないか。現在72歳の山田氏は、創業者でもあり社長復帰してまだ2年なので、経営意欲は高く、山田氏の目の黒いうちは大丈夫だと願いたい。
次稿では、ヤマダ電機と対照的に勢いを見せているヨドバシカメラの経営についてみていきたい。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)