菅官房長官が最終判断か
日本郵政グループ3社の社長に、一斉退陣論が強まってきた。7月31日の3社社長の会見が、謝罪の態をなしていなかったからだ。
「かんぽの植平社長の退任はほぼ確実だが、植平社長一人のクビでは納まらないだろう」(政府関係者)
かんぽの不正問題が発覚するまでは、一部で日本郵便の横山社長が日本郵政の社長に“成り上がる”ことが取り沙汰されていたが、これも消えたようだ。日本郵政社長にはなり手がない。
「今回の問題の背景には、全国郵便局長会会長を務めた後、3年前に日本郵便の執行役員になり、現在は副社長を務める大沢誠氏が数字最優先を現場に厳しく求めたことがある」(日本郵政の関係者)
かんぽ生命が保険販売の自粛方針を決めても、日本郵便のトップは動きが鈍かった。日本郵政の長門社長にはグループを統制する能力がない、とみなされている。グループ各社の複雑な事情も絡み合っているから、“撤退戦”がうまくいかないのだろう。
日本郵政がかんぽ生命株を売却した今年の4月以前に、多数の不正を経営陣が把握していた可能性が出てきた。長門社長は7月31日の記者会見で「4月時点の不正の認識」を否定したが、改めて説明を求められることになる。かんぽ生命の植平社長は「重大な認識に至ったのは6月」としている。「問題の規模感を認識したのは6月という事実に変わりない」という、かんぽ生命のこれまでの見解が正当性を持つのだろうか。
日本郵政グループは菅義偉官房長官の“天領”ともいわれている。自浄能力のない日本郵政グループのトップ人事に、菅長官がどのような決断を下すかにかかっている。菅氏は8月1日の記者会見で「問題のあった契約に関する調査、顧客への対応にしっかり取り組んでもらう必要がある。(進退は)その上で判断すべきことだ」と述べた。対応のメドがついた段階で人事を判断する。
通期業績は据え置きと発表
日本郵政は8月9日、2019年4~6月連結決算を発表した。最終利益は前年同期比9.3%増の1350億円で増益となったが、かんぽ生命の不適切販売の業績への影響は反映されていない20年3月期の通期業績見通しを据え置いた(最終利益は前期比12.4%減の4200億円)。これだけ不確定要素があるのだから、「未定」とするのが一般的だ。長門社長以下経営陣が、経営に対する影響を軽視している証拠だ。上場企業であるという基本認識に欠けている。
保険の販売が自粛され、今年度の営業目標撤回で、日本郵便の営業社員の手当ては月数万円減ると試算されている。日本郵政グループ労働組合(JP労組)は組合員の営業手当について補てんを求めているが、これも業績予想には反映されなかった。
経営陣は頭を低くして嵐の通り過ぎるのを待っているのだろうが、これから超大型台風が襲来する可能性もある。
(文=編集部)