競争激しい介護市場
さらに、新規参入の動きも活発だ。首都圏と関西で24カ所の有料老人ホームを運営するオリックス傘下のオリックス・リビングとノーリツ鋼機の子会社NKワークスは、共同で介護の見守りシステムを開発した。オリックス・リビングは自社の施設へすでに導入している。
入居者がベッドから起き上がろうとすると、ベッドの横に据え付けられたセンサーが感知し、スタッフが持つタブレット端末から通知音が出る。スタッフはいち早く現場に駆け付け転倒を未然に防ぐ。スタッフが手薄になる夜間の見守りの手間も省ける。センサーはカメラ機能を合わせ持っている。密室を悪用したスタッフによる入居者への虐待を抑止する役割も担う。
セコムは介護大手のツクイと提携し、24時間体制で高齢者を見守るサービスを10月から始めた。ツクイが昼間にデイサービスや訪問介護のサービスを提供。セコムは夜間を中心に高齢者から緊急連絡を受け、自宅に警備員を派遣する。
ツクイの顧客である在宅の要介護者4万4000人を対象に、希望者に見守りサービスを行う。岩手、宮城など東北四県でスタート、16年1月から全国に広げる。料金は税別で月額1800円と一般の家庭向け警備より割安にするそうだ。
夜間巡回見守りサービスは人手不足に加え、高齢者とその家族のニーズが多様化しており、いかに対応するかが介護事業者にとって大きな経営課題になっている。介護の省人化の分野で、セコムや業務用写真プリンター世界首位ノーリツ鋼機などが新規参入している。既存の介護業界の経営環境は厳しさを増している。
今回ワタミ買収で介護事業拡大を図る損保ジャパンにとっては、厳しい事業環境が待ち受けている。
損害保険・生命保険各社は、介護事業に関心を示している。東京海上ホールディングス傘下の東京海上日動火災保険はグループ会社で訪問介護事業を手掛けているが、6月にサービス付き高齢者向け住宅の運営に参入することを明らかにしている。明治安田生命保険も、介護付き有料老人ホーム事業を拡大する方針だ。
保険事業は人口減で保険料収入が伸び悩んでいるが、介護保険の給付額は伸びている。介護保険を契約した人に対して出資先の介護関連施設を紹介することや、保険金の代わりに介護サービスを受けられる「現物給付型保険」の商品化を計画している。大手各社は保険事業と介護の相乗効果を狙っている。
ソニー生命保険を傘下に持つソニーフィナンシャルホールディングスの子会社は、16年春に東京都内で有料老人ホームを開設する予定だ。
(文=編集部)