「今年6月に民事再生を申請した栗田出版販売の救済に手を上げた日販の子会社・出版共同流通が、最終的に提示された再生案から外れていた。大阪屋1社がスポンサーになるという案に変わっていたのは、今思えば、赤字のせいで栗田救済の数億円をねん出できなかったからだろう」
また、ある出版社の営業幹部は語る。
「日販は、返品を減らして売り上げを上げた結果、得られた利益を書店にも還元するというビジネスモデルを出版社と書店に提案した最初の取次。売上面でも最大手だったトーハンを抜いて、出版業界のリーディングカンパニーとして、他取次との返品業務の協業化など流通改善を進めてきた。とくに40%近くもある返品率は業界3者(出版社、取次、書店)にとって共通の“克服課題”。書籍25%、全体で30%などに書店の返品率を抑えるため、PARTNERS契約を結んで返品抑制に努めてきた。ライバルのトーハンと比べて、日販の返品率は低いのはそのためだ。だが、そこまでやっている最大手の取次が営業赤字になったというのは、出版流通の破たんを意味しているのではないか」
出版社で40年業界経験のある幹部は語る。
「昨年は大阪屋、今年は栗田と、業界3位と4位の取次が事実上、経営破たんした。大阪屋は楽天が筆頭株主となり、出版社などが出資をして救済。栗田はその大阪屋に吸収合併するという民事再生案が今年のクリスマスイブに諮られる。それ以下の取次では、一時は400億円以上もあった売り上げが半減以下の177億円になり、赤字を垂れ流し続けている太洋社もいい話は聞かない。協和出版販売はトーハンに吸収合併されたし、一昔前は業界3位だった中央社も今やトーハンの傘下。日教販も日販と資本業務提携している。出版取次の名だたる8社の現状は、こんなにもひどい状況になってしまった」
書店の廃業も加速
市場が縮小する中では、大手と中小企業の合併・提携によるグループ化が進むか、グループに入れない企業は廃業するしかない。ライバルのトーハンとは別に、大阪屋や栗田などと組む日販陣営は返品業務の協業化を進めてきている。
それでも赤字になったのは、市場縮小のスピードに業界の改革が追い付かないからだ。それは日販の単体の営業利益の推移をみれば一目瞭然。
・11年度中間決算:16億2900万円
・12年度同:12億6800万円
・13年度同:12億400万円
・14年度同:6億1100万円
・15年度同:2億8600万円
きれいに右肩下がりが続いているうえに、8%に消費税が上がった14年度は前年に比べて半減、15年度も半減以下と非常に厳しい状況に置かれている。